2011 Fiscal Year Annual Research Report
精神疾患と関連した行動異常を呈するHDAC6遺伝子欠損マウスの解析
Project/Area Number |
22700408
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
深田 斉秀 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 発生障害学部, 研究員 (80414019)
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Keywords | うつ病 / アセチル化 / HDAC6 / 抗うつ薬 / 行動解析 |
Research Abstract |
HDAC6遺伝子欠損(HDAC6KO)マウスは、尾懸垂試験において抗うつ薬を投与されたかのようなフェノタイプを示す。HDAC6は細胞質性脱アセチル化酵素であり、脳の中でも特に「うつ症状」との関連が指摘されている縫線核に強く発現していることから、HDAC6による非ヒストンタンパク質のアセチル化調節が「うつ症状」の緩解に関与することが推察される。本研究では、うつ病に対する新しい治療戦略の創出を目標に、HDAC6KOマウスが示す抗うつ傾向の分子基盤を明らかにすることを目指した。 昨年度、HDAC6KOマウスの抗うつ様行動は、脳の発生・形態的な異常によるものではなく、成体脳におけるHDAC6脱アセチル化活性の欠損に起因すること、HDAC6阻害剤に抗うつ薬様の効果があることを明らかにした。本年度は、(1)マウス脳における主なHDAC6発現細胞はTPH2陽性のセロトニン作動性神経細胞であること、(2)HDAC6KOマウスのホームケージ活動量は野生型と同程度であること、(3)HDAC6KOマウス脳内のセロトニン合成酵素及びセロトニン含量は野生型と同程度であること、(4)既製の抗うつ薬の投与は、マウス脳内で顕著なタンパク質のアセチル化変化をもたらさないことを明らかにした。これらの結果から、HDAC6遺伝子欠損およびHDAC6脱アセチル化活性抑制によってもたらされる抗うつ効果は、既製の抗うつ薬の作用機序と異なると推察された。従って、セロトニン神経細胞におけるHDAC6の活性抑制(またはHDAC6基質分子のアセチル化誘導)は、うつ病に対する新しい治療戦略として期待できる。
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