2010 Fiscal Year Annual Research Report
嗅球における抑制性ニューロンのサブタイプに基づいた情報処理機構の解析
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22700409
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
成塚 裕美 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特任研究員 (00511388)
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Keywords | 嗅球 / 顆粒細胞 / 樹状突起 / スパイン |
Research Abstract |
齧歯類嗅球における顆粒細胞のサブタイプの機能分化を明らかにする為に、申請者はこれまでperisomatic-targetingタイプ(type S cell)の解析を中心に行ってきた。今年度はdendritic-targeting (Dt)タイプ顆粒細胞の詳細な解析を行った。Dt顆粒細胞は成体でも新生されているが、本研究ではGFPをコードするウィルスによる標識を用いることで、新生後10日、4週、8週のDt顆粒細胞の形態を解析した。 申請者は、新生後10日、4週、8週のDt顆粒細胞が、投射ニューロンである僧帽細胞の「樹状突起にコンタクトするスパイン」に加え、僧帽細胞の「細胞体にコンタクトするスパイン」を持つことを明らかにした。さらに本研究では、Dt顆粒細胞のスパインのうち、僧帽細胞の細胞体にコンタクトするスパインのサイズは、新生後10日から4週にかけて成熟するのに対し、僧帽細胞の樹状突起にコンタクトするスパインでは4週から8週にかけて成熟することを発見した。 スパインサイズは、その形態の安定性やシナプス伝達の性質を反映する重要な特性であるが、成体で新生されるDt顆粒細胞のスパインのサイズを各発達段階で明らかにしたのは本研究が初めてである。また、Dt顆粒細胞のスパインを、投射ニューロンの細胞体や樹状突起といった投射先の部位ごとに着目して解析した研究も本研究が初めてである。 これまで、Dt顆粒細胞による投射ニューロンの活動調節は、「樹状突起への抑制」を中心に議論されてきた。しかし本研究の結果は、Dt顆粒細胞は投射ニューロンの異なる部位に異なるタイムコースで抑制性シナプスを発達させながら、その活動を制御する事を強く示唆している。本研究により、Dt顆粒細胞の機能を明らかにする上で、今後は投射ニューロンへの部位特異的な抑制と、それらの統合的な働きを考えることが重要であることが明らかになった。
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