2010 Fiscal Year Annual Research Report
一酸化窒素合成酵素発現ニューロンによる大脳皮質視覚野のシナプス可塑性制御機構
Project/Area Number |
22700412
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
遠藤 利朗 名古屋大学, 環境医学研究所, 准教授 (30353436)
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Keywords | 視覚野 / nNOS / NO / 長期増強 / 長期抑圧 / Substance P |
Research Abstract |
本研究の目標は、大脳皮質視覚野においてシナプス可塑性の起きやすさや変化の方向が制御される機構を埋解することである。本計画では、そのような調節に重要と考えられている一酸化窒素(NO)による信号伝達に焦点をあて、神経型NO合成酵素(nNOS)発現ニューロンの性質とその役割について研究している。 平成22年度の研究では、まずはnNOSニューロンの基本的な電気生理学的、薬理学的性質を明らかにするべく、マウス大脳皮質視覚野のスライス標本上のnNOSニューロンからホールセルパッチクランプ記録を行った。 実験には、GABA作動性ニューロン特異的にGFPを発現する遺伝子改変マウス(GAD67GFPマウス)を用いた。先行の免疫組織化学的研究によれば、大脳皮質にはnNOSを強く発現するニューロンが散在し、これらに特異的にP物質(substance P,SP)の受容体(NK1受容体)が発現していることが報告されていた。本研究ではこのことを初めて電気生理学的に確認することに成功した。すなわち、ホールセル記録で、SP投与に対して脱分極または脱分極性電流応答を示したニューロンのほとんどが、記録後の抗nNOS抗体による染色でnNOS陽性であることが確認され、一方でSPに対して反応を示さなかったニューロンはnNOS陰性であった。SPに対する応答は、NK1受容体の拮抗薬RP67580によって抑制された。SPで誘発される電流は反転電位から非選択的陽イオン電流であると考えられた。また、nNOSニューロン(SPに反応したニューロン)は、脱分極通電に対しては持続的な高頻度発火や一過性のバースト発火は示さず、低頻度で且つ徐々に発火頻度を減少させる(spike frequency adaptation)発火パターンを示した。以上の成果は、次の段階としてnNOSニューロンのシナプフ可塑性制御における役割を検討する基礎となるのである。
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