2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700413
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福井 巌 京都大学, 医学研究科, 助教 (90362532)
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Keywords | 神経回路 / 音源定位 / 音源地図 |
Research Abstract |
音源地図形成には両耳間時間差(ITD)と両耳間音圧差(ILD)が重要な手がかりとなる。鳥類ではITDの検出は大細胞核(NM)が両側性に層状核(NL)へ投射することで形成され、ILDは角状核(NA)から外側毛帯核(LLd)への入力と、両側のLLd同士の相互抑制により形成される。ILDの計算に重要な役割を果たすNMには上オリーブ核(SON)から抑制性の投射が有るが詳細な機能は不明であった。しかし、研究によりSONからNMへの抑制は、ILD計算における周波数選択性を増強している事を初めて明らかにした(Fukui I, et al., 2010)。また、SON同士の相互抑制がある事で、音圧が高い方がSONからNMへの抑制がより強くなり、音圧が低い方は抑制が弱くなる事で、左右のNMの発火頻度をバランスしている事を明らかにした(Burger, Fukui I et al, 2011)。これらのSONを介した神経回路により、NLでのITD計算に悪影響を及ぼす可能性がある、音周波数間の相互作用と左右の音圧差によって生じる発火頻度の違いを軽減させている事が明らかになった。この巧妙な調節を受けて計算されたITDは下丘においてILDと統合し、音源地図が形成されることになる。下丘に微小電極を挿入して記録した神経活動は、下位には見られない応答パターンを示した。ITLとILD両方に感受性を持ち、特定の方位に対して強い応答を示す神経細胞が多く存在した。一方で、音周波数によって複雑な興奮や抑制のパターンを示すものなど、周波数間の相互作用が顕著な神経細胞も存在した。この細胞では音の方位に対して顕著な発火頻度の違いが見られなかった。これらの結果は下丘において音源の定位に特化したグループと、音源に関係なく音質などを分析するグループに、機能的に分かれている車が示唆された。
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