2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22700450
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
安本 史恵 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (00455461)
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Keywords | 脳・神経 / 霊長類 |
Research Abstract |
昨年度までの研究において、進化的に高等な実験動物、カニクイザルの脳より神経細胞を採取し、初代培養することに成功した。本年度はその胎齢80日カニクイザル大脳皮質初代培養系において、MAP-2陽性の神経細胞のうちに多様な形態(神経突起の数・細胞体のサイズ・核のサイズ)を確認した。 カニクイザル大脳皮質由来初代培養神経細胞は、マウスやラットにおける初代培養神経細胞と比較して、概して神経突起の本数が少なく、平均して2本程度である。だがカニクイザルの神経細胞の中に少数ではあるが、一次突起の本数が4~6本に及ぶものが散見された。またこれらの神経突起の本数が多い神経細胞の細胞体は、本数の少ない細胞体に比して体積が大きい傾向が見受けられた。 神経細胞の形態の違いは発火頻度などの神経活動の差と直結するとされるため、形態をキャラクタライズすることは機能的な分類と相関することになる。今後はこれらの神経細胞の形態を複数のパラメータ(一次突起の数・二次突起の数、ブランチングポイントの数、突起の長さ、細胞体のサイズ、核のサイズ、培養日数に伴う突起伸展等発達度合の相違など)を用いて量的に解析し、また免疫細胞化学の手法を用いて、たとえばどのような神経伝達物質を有する神経細胞の形態的特徴であるのかをあわせて検討し、機能的意味付けにより迫りたいと考えている。 本年度は、免疫細胞化学的手法によりGABA作動性神経細胞の同定という一歩を進めることができた。今後、GABA作動性神経細胞をさらにサブタイプ(パルブアルブミン陽性神経細胞・ソマトスタチン陽性神経細胞・カルレチニン陽性神経細胞)ごとに同定し、それぞれにおける形態を量的評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の計画においては、本年度、アクソンガイダンス・シナプス形成に関連する遺伝子改変操作を行う予定であった。しかし介入実験に入る前に、本実験系において霊長類に特有である可能性の高い神経細胞の形態の多様性を見出した。この多様性の性格付けを行うことなく介入実験を行った場合、遺伝子改変の結果として本実験系に生じる変化は何を検出しているのか分からなくなると考えられた。またそれ以上に、形態における相違は機能的な差と密接に関連することから形態的特徴を解析することが先決と考え、基盤固めを行った。今後、形態的特徴とそれぞれの特徴を有する神経細胞が発現している遺伝子(特に神経伝達物質の種類に関連するものなど)を解明することで、より有意義な結果が得られると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
グルタミン酸作動性神経細胞を主体とした興奮性神経細胞とGABA作動性神経細胞を主体とした将来的な抑制性神経細胞の各サブタイプにおいて形態の違い等を解析する。解析予定のパラメータとして以下を想定している。 ・全体の神経細胞に占める割合 ・一次突起の数、二次突起の数・・・、ブランチングポイントの数、突起の長さ ・細胞体のサイズ、核のサイズ ・培養日数に伴う突起伸展等発達度合の相違
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