2011 Fiscal Year Annual Research Report
光線力学治療の高度化に向けた腫瘍組織の光学特性値の算出およびデータベース化
Project/Area Number |
22700471
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石井 克典 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (20512073)
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Keywords | 光線力学治療 / 光学特性 / 積分球 / 逆モンテカルロ法 |
Research Abstract |
がんのレーザーを用いた低侵襲治療法の一つである光線力学治療(Photodynamic Therapy; PDT)において、がん病変組織内をレーザーがどのように伝搬しているかを理解するために、がん組織の光学特性値およびPDTによる光学特性値の変化、また光学特性値の変化と組織学的な変化の関係性を明らかにすることを目的とし、研究を行った。C57/BL6マウスにLewis肺がん細胞株を背部皮下移植し得られる腫瘍組織に対し、光感受性物質・タラポルフィンナトリウムと励起光源・波長664nm半導体レーザーを用いたPDTを行い、PDTされた腫瘍組織を得た。それらを試料とし、双積分球光学系を備えた可視・近赤外分光光度計を用いて、正確な総透過率および拡散反射率の測定を行った。得られた総透過率と拡散反射率から、逆モンテカルロ法を用い、光学特性値の吸収係数、換算散乱係数を算出し、算出された光学特性値から光侵達深さを見積もった。PDTによる腫瘍組織の光学特性値および光侵達深さの変化を理解するために、PDTを行った腫瘍組織の組織学的評価を行い、それぞれの変化を関連付け、光学特性値の変化を考察した。結果、PDT実施7日後、検討波長全域で換算散乱係数の増加が観測された。すなわち、波長664nmの励起レーザーは、PDT初回に比べてPDT7日後は侵達しにくくなることが定量的に分かった。組織学的評価から、換算散乱係数の増加は腫瘍細胞の死滅と繊維組織への置換による散乱形態の変化、すなわち細胞の密な状態から細胞が疎でコラーゲン繊維中心の状態への変化によると考えられた。本研究により得られた知見を利用することにより光学特性値変化を考慮したレーザー照射計画の作成が可能であり、確実なPDTの再治療(PDT後同じ病変部位への2回目のPDT)に貢献することができる。
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