2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜融合特性をもつ蛍光金属錯体型糖鎖の創製と癌細胞ターゲッティングへの展開
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22700483
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
岡田 朋子 東京工科大学, 応用生物学部, 助教 (60409795)
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Keywords | 糖鎖 / 蛍光金属錯体 / ルテニウム / 膜融合 / 癌 |
Research Abstract |
本研究は、生体膜融合特性を付与した蛍光金属錯体型糖鎖を創製し、従来よりも生体内に近い環境下において糖鎖が示す分子認識能を評価することを可能にする手法の確立を目的とする。生体内では糖鎖は糖タンパク質や糖脂質として細胞表面に存在しており、これらの糖鎖の分子認識能を評価することは、ウイルス感染のメカニズム解明や創薬研究に大きく貢献する。しかし、既存の多くの方法では、生体内における糖鎖環境とは異なる条件下で糖鎖の分子認識能を評価するため、実際のin vivoでの分子認識と一致しない場合があった。本研究において確立する新しい手法は、従来よりも生体内に近い環境下で糖鎖の分子認識能を評価可能にするため、これまでの糖鎖の分子認識能評価法を大きく改善することが期待できる。さらに、癌細胞膜に選択的に融合する蛍光金属錯体型糖鎖を創製すれば、癌細胞のターゲッティングを可能にする新たな手法の開発につながる。本年度は、昨年度までに合成した脂質を組み込んだ蛍光金属錯体型糖鎖を用いてリポソームを形成し、膜表面に存在する糖鎖のレクチン認識能を評価する手法を検討した。蛍光金属錯体型糖鎖をリン脂質(DPPC:dipalmitoylphosphatidylcholine,DOPC:dioleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)およびコレステロールと混合し、エクストルージョン法を用いて安定なリポソームを形成することに成功した。つづいて、このリポソームとレクチンを混合し、糖鎖のレクチン特異的結合を蛍光偏光法で評価可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リポソームに膜融合させた金属錯体型糖鎖を用いて、糖鎖のレクチン認識能を蛍光偏光法で評価できることを実証したことにより、本年度に実施予定としていた生体膜上の糖鎖が示す分子(タンパク)認識能の解析が達成されたと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成22および23年度に合成した膜融合特性をもつ金属錯体型糖鎖を癌細胞膜に反応させ、細胞内への取り込み反応を蛍光法(蛍光顕微鏡、セルソーター、マイクロプレートリーダー)を用いて評価する。特に、糖鎖の種類に依存した取り込み特性を詳細に評価する。また、正常細胞と癌細胞に対する取り込み反応を比較し、癌細胞に特異的に反応する金属錯体型糖鎖を探索する。
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