2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700484
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
山本 衛 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (00309270)
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Keywords | バイオメカニクス / 骨 / 腱 / 微小損傷 |
Research Abstract |
生体内で骨や腱・靭帯組織には,常に何らかの力学的負荷が作用しているとともに,それらの負荷の大きさや様式は生活環境や運動条件等によって大きく変化する.また,各組織が曝されてきた力学的環境のもとで生じる損傷は,疲労性の外傷や機能低下などの疾患のみならず組織の健全性維持と密接に関連していることが知られている.しかし,骨や腱・靭帯,ならびにそれらの付着部位における部分的な損傷は,発生要因や損傷形態が多様であることから,損傷メカニズムの解明はもとより現象の把握も十分に行われていないのが現状である.そこで,骨・腱付着部の構造一機能関係を定量化するための基礎データとして,骨および腱の部分的損傷を調べるため,骨と腱組織に非弾性的かつ非破断的な単一,静的,繰り返しの過負荷を作用させ,その後に残存する非回復性のひずみを測定し,さらに過負荷後に破断までの再負荷試験を実施することで試料の残存強度を測定し,過負荷によって生じた残存ひずみと組織強度の変化との関係を求めた.皮質骨と膝蓋腱の試料の長軸方向に,非破壊的な単一および持続的な過負荷を作用させ,その後に生じる非回復性の残存ひずみを測定した.両組織ともに単一の過負荷の場合よりも持続的に過負荷を作用させた場合のほうが大きな残存ひずみが生じる傾向がみられ,残存強度の低下も単一過負荷よりも持続的な過負荷で顕著であった.つまり,蓄積される残存変形は組織強度の低下の程度を示す可能性があると考えられ,さらに過負荷の大きさだけでなく負荷の作用時間が組織の強度低下を決定する重要な要因となることが推察された.これらの結果より,過負荷作用後に生じる残存変形を定量的に把握することは,部分損傷後に完全断裂が発生する危険性の的確な予測や部分的な損傷後の適切なリハビリテーション手法の設定等,骨や腱・靱帯の整形外科領域における治療法の改良に貢献できる可能性があると推測される.
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