2010 Fiscal Year Annual Research Report
疎水性相互作用を利用したポリイオンコンプレックスナノ粒子の創製と機能評価
Project/Area Number |
22700493
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤木 隆美 大阪大学, 工学研究科, 特任助教 (00527236)
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Keywords | ナノ粒子 / ポリイオンコンプレックス / 疎水性相互作用 / ドラッグデリバリーシステム |
Research Abstract |
反対電荷を有する2種類の高分子を混合することで、静電的相互作用によるポリイオンコンプレックス(PIC)が形成される。これらPICは水中(純水)では安定な会合体を形成しているが、高塩濃度の緩衝液中やpH変化、希釈により、ポリマー鎖間の相互作用が遮へいされることで、会合体の溶解や凝集が引き起こされる。そこで本研究では、静電相互作用に加え、疎水性相互作用を利用することで、生理的環境下で安定に機能するPICナノ粒子の調製と物性評価を行った。アニオン性のポリアミノ酸であるポリ(γ-グルタミン酸)(γ-PGA)に疎水性アミノ酸であるフェニルアラニン(Phe)を種々の割合で導入し、Phe導入率が16,24,40%の水に可溶な疎水化γ-PGA(γ-PGA-Phe-16,24,40)を合成した。得られた疎水化γ-PGAとカチオン性ポリアミノ酸であるポリ(ε-リシン)(ε-PL)をリン酸緩衝液(pH7.4)中で混合し、経時的に動的光散乱(DLS)により粒径を測定し、ナノ粒子の安定性を評価した。γ-PGA-Pheとε-PLとを種々の濃度比で混合し粒径を測定した結果、調製直後にはすべてのサンプルでナノ粒子の形成が認められた。その後、経時的に粒径を測定すると、γ-PGA-Phe-16では、時間の経過に伴い、粒子の崩壊および凝集が認められ、DLS測定にょり単分散なピークは得られなかった。一方、Phe導入率の高いγ-PGA-Phe-24では、粒子の膨潤により粒径の増加がみられたが、単分散性を維持していた。またγ-PGA-Phe-40は高い安定性を示し、長期保存により粒径の変化は認められなかった。この高い安定性は、粒子内部でのPheによる疎水性ドメインの形成に起因していた。疎水化PICナノ粒子は、静電的相互作用に加え、導入した疎水化基の疎水性相互作用により、安定なナノ粒子が形成可能であった。また、2種類のポリアミノ酸の混合比、Pheの導入を変化させることで、粒子サイズを200~1000nm程度の範囲で制御するが可能であった。生理環境下で安定なPICナノ粒子は、ドラッグデリバリーシステムの薬物担体としての応用が期待される。
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Research Products
(9 results)