2010 Fiscal Year Annual Research Report
抗腫瘍効果を保持した高機能骨修復セメントの作製とその生物学的評価
Project/Area Number |
22700500
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Research Institution | Kanagawa Academy of Science and Technology |
Principal Investigator |
本田 みちよ (財)神奈川科学技術アカデミー, 次世代バイオセラミックスプロジェクト, 研究員 (20384175)
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Keywords | バイオマテリアル / 骨修復セメント |
Research Abstract |
当該研究では、キレート作用を有するイノシトールリン酸(IP6)を利用し、従来の水酸アパタイト(HAp)セメントとは異なったメカニズムで硬化する新規の骨修復セメントを作製し、さらにIP6の有する抗腫瘍効果を応用して、新たな機能を付与させた次世代型骨修復セメントを開発することを目的とした。 生体材料と細胞応答の間には非常に密接な関係があるため、作製したセメントの材料特性を調査した。種々の濃度(0-5000ppm)のIP6溶液でHApを表面修飾した結果、HAp粉体に対するIP6の吸着量はIP6濃度に依存して増加し、3000ppm程度で飽和することが明らかになった。さらに、得られた粉体の表面電位を測定した結果、IP6の吸着に伴い負電荷へシフトし、吸着量と同様に3000ppm程度で一定に達した。また、それらの粉体を用いて作製したIP6-HApセメントはHApセメントに比べ、高い力学的強度を示した。IP6の吸着量が増加したことにより、キレート部位が増加し、強度の向上につながったと考えられる。強度の向上は、臨床応用を踏まえると非常に有効である。一方、IP6の抗腫瘍効果はin vitroで様々な細胞株において確認されているが、その作用機序は未だ明らかではない。そこで、IP6溶液のみをターゲットとなる骨肉腫細胞(HOS)へ曝露することにより、その影響を生物学的に評価した。IP6は、HOS細胞においてもIP6濃度依存的に細胞増殖を有意に抑制した。また、その際の細胞形態を観察した結果、丸く変形し細胞骨格が崩壊したものや核の断片化が観察された。この細胞死が引き起こされるメカニズムについて調べたところ、IP6を処理した細胞ではアポトーシスが誘導されていたことが分かった。 本結果は、今後実施するキレート硬化型IP6-HApセメントの抗腫瘍性や生体適合性評価に有用となると考えられる。
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Research Products
(1 results)