2011 Fiscal Year Annual Research Report
抗腫瘍効果を保持した高機能骨修復セメントの作製とその生物学的評価
Project/Area Number |
22700500
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Research Institution | Kanagawa Academy of Science and Technology |
Principal Investigator |
本田 みちよ 財団法人神奈川科学技術アカデミー, 次世代バイオセラミックスプロジェクト, 研究員 (20384175)
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Keywords | バイオマテリアル / 骨修復セメント |
Research Abstract |
当該研究では、キレート作用を有するイノシトールリン酸(IP6)を利用し、従来の水酸アパタイト(HAp)セメントとは異なったメカニズムで硬化する新規の骨修復セメントを作製し、さらにIP6の有する抗腫瘍効果を応用して、新たな機能を付与させた次世代型骨修復セメントを開発することを目的とした。本年度実施した具体的な研究項目を示す。 1)IP6で表面修飾したHApを用いて作製したセメント上で培養した骨肉腫細胞(HOS)の遺伝子発現の変動解析。2)正常細胞への影響を考慮しマウス頭蓋冠由来骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)をモデルとしたIP6-HApセメント上での生体適合性の評価。3)HOS細胞の抗腫瘍効果の発現メカニズムの検証。 1)セメント試料片上でのHOS細胞の発現変動遺伝子をDNAマイクロアレイを用いて調査した結果、アポトーシスを抑制する遺伝子の発現が低下し、アポトーシスを促進させる遺伝子の発現が亢進することがわかった。これより、IP6-HApセメント上では、骨肉腫細胞にアポトーシスを誘導することで抗腫瘍効果を発現させることが示された。また、2)正常細胞の生体適合性についてであるが、種々の濃度のIP6で表面修飾したIP6-HApセメント上でMC3T3-E1細胞を培養した結果、正常細胞は腫瘍細胞に比べ、IP6に対する感受性が低く、IP6が一定濃度以下では優れた生体適合性を有することがわかった。この細胞種による感受性の違いを利用し、抗腫瘍性を発現させるマテリアルデザインが可能であることが示された。さらに、3)抗腫瘍効果の発現メカニズムをHOS細胞を用いて調べた結果、IP6-HApセメントから未吸着IP6のリリースが起こることで、局所的に生じる高濃度のIP6が細胞に作用し、これがアポトーシスを誘導したと考えられた。つまり、セメントはDDSキャリア様に機能することで抗腫瘍効果を発現すると推測できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度は1)in vitroにおけるキレート型骨修復セメントの生体適合性および抗腫瘍効果の検証および2)in vivoにおけるキレート型骨修復セメントの生体適合性の検証を実施した。1)に関しては作製したセメントの正常細胞(骨芽細胞様細胞株を使用)への生体適合性を証明したと同時に腫瘍細胞には一定濃度以上のIP6で作製したセメントでは抗腫瘍効果を有することを示した。一方、2)については、短期的な試験と長期的な試験を実施しており、短期的な埋入試験は終了し、長期的な試験は継続中であるが、作製したセメントをインプラントした際には良好な生体適合性が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は昨年度より継続している1)in vivoにおけるキレート型骨修復セメントの生体適合性の評価を長期埋入した場合について検証する。また、2)in vivoにおけるキレート型骨修復セメントの抗腫瘍効果の検証についても検証予定であり、計画当初は骨髄腫異種移植モデルを用いることを予定していたが、これを明らかにするためにはまず、破骨細胞とIP6もしくは、破骨細胞とIP6-EApセメントとの関係を明確にする必要がある。したがって、動物実験よりもin vitroでの検証を実施することの方が優先順位が高いと判断し、2つ目の課題として、「キレート硬化型骨修復セメント上での成長因子を介した抗腫瘍効果の検証」を行うように変更する。
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Research Products
(1 results)