2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700511
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
安部 恵祐 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, グローバルCOEリサーチアソシエイト (10535652)
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Keywords | ナノ秒高電 / がん治療 / アポトーシス / CERAMIDE / イオン流入 / c-Jun |
Research Abstract |
本研究は、新たな物理的手法を用いたがん治療方法を作るための基礎研究である。現在ある放射線治療は、DNA損傷により治療するが、正常細胞にも損傷を与え、副作用を起こす。また、ラジオ波治療は電流によるジュール熱でがん組織を熱で破壊する。申請者の用いた高周波高電界治療では、10KV/cm以上100ナノ秒くらいのナノ秒パルス(nsPEF>を用いた。その結果、HeLaS3細胞に12.5KV/cm、パルス幅120ns、繰り返し印加周波数0.5pps、100回印加の条件で、印加2時間後にPI染色率がピークになり、70%ほどの細胞がPI陽性を呈する。さらに、その後、6時間頃よりDNA断片化が開始される。また、2時間後にcaspase3の活性化が観察され、アポトーシスのような細胞死であった。この現象の詳細な機構を調べたところ、以下の事象がわかった。(1).パルス印加中にカルシウムイオンなどが流入される。(2)イオン流入の影響により、膜裏打ち周辺部の酵素が活性化し細胞膜を分解する。(3).(2)の結果、印加後5分以内にアポトーシス経路上流のセカンドメッセンジャーとして知られているCERAMIDEが大量に発現する。(4)印加30分から2時間後でIRE1・JNK・c-JunのmRNAの発現が増える。(5).印加2時間後、c-Junのリン酸化が起きる。などの事象よりイオン流入・CERAMIDE発現・小胞体ストレスにより細胞死が働いていると示唆される結果が得られた。また、イオン流入を抑制し印加したものでは、CERAMIDEの発現やc-Junのリン酸化が抑制された。加えて、イオノフォアを用いてCaイオン流入をさせたものでは、nsPEFに比べ反応は遅いながらもCERAMIDEを発現し、細胞死を誘導した。そのため、欧米で先行されて行われているnsPEFを用いたメラノーマ治療で長期アポトーシス誘導効果が謎だったが、本研究によって判明したnsPEFによってできたCERAMIDEの発現が長期的な効果をもたらしていると推測される。
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