2010 Fiscal Year Annual Research Report
前頭葉性失書に対する発現機序に基づく訓練法の開発およびその効果評価
Project/Area Number |
22700527
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
遠藤 佳子 東北大学, 病院, 言語聴覚士 (60569466)
|
Keywords | 前頭葉性失書 / 音韻性失読 / 音韻性失書 / EB-R / 失語症訓練 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1)前頭葉性失書例の読み書き障害の特徴と病巣を詳細に評価し、その発現機序を明らかにすること、2)前頭葉性失書例に対し発現機序を踏まえた書字訓練法を考案し、訓練を行いEB-Rを明らかにすること、の2点である。 本年度は、前頭葉性失書例の読みと書きの障害の特徴及び病巣を詳細に評価した。前頭葉性失書例及びその他の失語、失読、失書例に対し書き取り課題及び音読課題を施行した。刺激として、仮名一文字、有意味語、その単語の文字順を入れ替えた置換綴り、無意味綴りの4種類を用いた。結果は、当初の予想通り、前頭葉に限局した病巣を有する症例では、仮名一文字の書き取り及び音読の成績は比較的良好であったが、有意味語や置換綴り、無意味綴りの書き取り及び音読の成績は不良である傾向にあった。特に、音読では、仮名一文字と有意味語の成績は良好であったが、置換綴りを誤って類似の実在語として音読する語彙化が多く出現する傾向にあった。これらの症例の病巣は、前頭葉の中でも下前頭回に病巣を有する場合が多かった。その他の失語、失読、失書を呈する症例では、仮名一文字、有意味語、置換綴り、無意味綴りのいずれも同程度の書き取り又は音読の障害を呈する傾向があった。そのような症例の病巣は、側頭葉、頭頂葉に分布している傾向にあった。 このことから、前頭葉失書例は、書字と音読の障害の背景に、音韻から文字または文字から音韻への「音韻-文字変換」の連続的な処理に問題が有る可能性が明らかになった。またこの「音韻-文字変換」の連続的な処理には前頭葉が深く関与していることが明らかとなった。
|