2011 Fiscal Year Annual Research Report
運動器慢性痛の発症機序の解明 -生後発達因子の行動組織学的研究から-
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22700554
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Research Institution | Hamamatsu University |
Principal Investigator |
櫻井 博紀 浜松大学, 保健医療学部・理学療法学科, 講師 (60454419)
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Keywords | 慢性痛 / 運動器 / モデル動物 |
Research Abstract |
運動器障害をはじめとした神経損傷以外の原因で発症する慢性痛は、発症起点より空間的・時間的拡大を示す慢性広範囲痛を呈し、社会的に大きな問題となっている。そこで本研究では、運動器障害による慢性痛のメカニズム解明を進めるために、運動器慢性痛モデルの開発と、そのモデルを用いて慢性痛の発症・維持要因を探る。 特に、若齢期においで慢性痛が発症しにくいことに注目し、生後の発達過程における何らかの要因が発症に関与している可能性が考えられることから、その要因を末梢および中枢から行動学的、組織学的に探っていく。それにより、運動器慢性痛のメカニズムの解明と効果的な慢性痛リハビリテーションの基礎の構築につなげる。 神経損傷以外の慢性痛モデルとして、筋を損傷することにより慢性痛が発症する運動器慢性痛モデルを確立した。このモデルにおいて9週齢(成熟期)処置では、処置後2週目から10週以上にわたり両側性に亢進が長期持続し、慢性痛発症が確認された。一方、3週齢(若齢期)処置では9週齢(成熟期)処置と異なり、慢性痛が発症しなかった。また、筋組織で処置急性期では筋線維の一部が変性・壊死し、壊死した筋線維の周囲には好中球、マクロファージが浸潤していた。慢性期では、LH処置後6週目では、ほぼ正常な筋組織像に近いが、まだ、中心部に核を持つ再生筋細胞が大小不同で多く残っていた。これらの所見は3週齢処置、9週齢処置で大きな差が見られなかった。今回、3週齢処置で9週齢処置と異なり、慢性痛が発症しなかったことは、3週齢で完成していない部分が慢性痛発症に関与していることを示唆しており、また、筋組織において、処置急性期および慢性期において3週齢処置、9週齢処置で大きな差が見られなかったことから、末梢筋組織の損傷回復ではない、他の要因の関与が大きいことが伺えた。
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