2011 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷者の運動機能回復を目的としたヒト脊髄神経機構の可塑性に関する基礎的研究
Project/Area Number |
22700567
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小幡 博基 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (70455377)
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Keywords | 脊髄 / 可塑性 |
Research Abstract |
本研究の目的は,脊髄運動ニューロンに収束する神経経路と脊髄運動ニューロン間のシナプス伝達効率がすでに脳において実証されているシナプスの学習則(シナプス前細胞からの興奮性入力とシナプス後細胞が興奮する時間的前後関係に応じてそのシナプスの伝達効率が増強または減弱する)に基づいて変化するか明らかにすることであった,研究期間の2年目にあたる今年度は,シナプスの学習則に基づいて伸張反射応答の入出力特性を変化させることが可能であるか検討した. ヒラメ筋の筋紡錘からの求心性経路を対象とし,ヒラメ筋への筋伸張刺激とヒラメ筋Ia求心性神経(後脛骨神経:PTN)への電気刺激をペア刺激とした連続的な介入刺激を行った.介入刺激は0.1Hzの頻度で100発,約16分間行った.ペア刺激の時間間隔(inter-stimulus interval:ISI)は,表面筋電図より得られるヒラメ筋の伸張反射応答(筋伸張刺激により誘発)がH反射応答(PTNへの電気刺激により誘発)よりも5msec先行する時間間隔(ISI=5msec)と,H反射応答が伸張反射応答に5msec先行する時間間隔(ISI=-5msec)の2条件を設定した.その結果,介入刺激の10分後において,伸長反射応答の平均振幅はISI=-5msecでは平均で約81%に減少し,ISI=5msecではそれぞれ約132%に増大した(介入刺激前を100%とする). 本研究の結果は,筋伸張刺激と末梢神経電気刺激を組み合わせた刺激方法を用いることで,伸張反射経路の興奮性を促通・抑制の双方向へ選択的に変化させられることが可能であることを示している.本研究の成果は,特に,伸張反射の病的亢進状態により痙縮を伴う脳卒中患者や脊髄損傷者に対し,伸張反射経路の神経連絡を弱めることで運動機能を改善するという新しい神経学的治療方法の基盤になる知見を提供するものである.
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Research Products
(1 results)