2011 Fiscal Year Annual Research Report
片眼白内障手術患者における両眼情報統合過程の解明と臨床応用
Project/Area Number |
22700573
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
溝上 陽子 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 助教 (40436340)
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Keywords | 白内障手術 / 両眼情報 / 色覚 / コントラスト感度 / 高齢者 |
Research Abstract |
白内障の進行は両眼で異なるため、片眼のみ白内障手術を行う場合がある。そこで問題になるのは、透明な眼内レンズを入れた手術眼と、非手術眼の見えの差が大きく、手術後長期間にわたり違和感を訴える患者がいることである。本研究は、将来的に手術前後の診療や生活補助ツールに役立てるための基礎的研究として、片眼白内障手術前後の左右眼と両眼視それぞれの視覚特性を調べることにより、その順応過程と両眼情報統合過程に関する基礎データの取得を行った。下記の検査項目に対して定期的測定を行った。 色知覚:色の見えが異なる各眼の情報が、両眼視ではどのように統合されるかを、各眼.両眼の無彩色知覚を求めることにより調べた。 空間周波数:視力・空間周波数特性が異なる各眼の情報が、両眼視ではどのように統合されるかを、コントラストと細かさを変化させたグレーティング(縞)が見える閾値を求めた。 被験者は、術後数週間以降の視力が比較的安定した状態、また非手術眼は矯正視力0.8以上を要する患者である。また、新しい患者では手術前後の変化・術後の長期的な変化をより詳細に調べた。また、若年者の色の見えやコントラスト感度を求める関連実験も行った。 データ解析の結果、大多数の患者において片眼ずつの色知覚は異なるが、両眼では情報は統合されていることが示された。また、術前後の比較では、手術眼のみならず非手術眼の無彩色知覚も変化していることが分かった。コントラスト感度に関しては、左右眼の差が小さいケースが多かった。差がある場合、両眼視の感度はコントラスト感度の良い方の眼の結果と一致する傾向があった。 コントラスト感度の場合は優位眼が存在するが、色知覚の場合は左右眼の情報を統合するという結果から、視覚特性に応じたモデルを適用することにより見えの予測が可能であることが示された。ただし、左右眼の情報の重み付けは個人差が大きく、単純な視覚モデルでは予測できないと考えられる。
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