Research Abstract |
体力医科学分野において,筋が発揮する力は関節トルクとして外部に出力されたものをロードセル等の機器を介して測定される.その関節トルク(力)は,実際は測定で得られる一方向だけではなく,複数方向へ分散されている.それにも関わらず,力を司る筋活動動態と実際に発揮された力に関する研究の多くは,一方向の力発揮と筋活動量との関連性にのみ着目されて行われている.このような背景の基,本研究では「加齢や筋疲労にともなう力の分散量様相と筋活動量変化」や,「筋力トレーニングにおける力の分散(方向性)の改善とそれにともなう筋活動の変容との関連性」を明瞭化することを目的とした. 平成22年度においては,若齢者(8名)を対象とし,第一背側骨間筋収縮による第二指の等尺性外転動作を対象動作とし,力発揮時における意図しない方向への力の分散様相とそれに纏わる筋活動との関連性の解明を試みた.対象者前方のモニタにはターゲットとなる力(X方向)を示すラインと実際に発揮した力を示すラインを表示し,視覚的フィードバックを与えた.対象者は各課題において,発揮する力をターゲットに精確に合うようにできるだけ努力した.対象者は,(1)等尺性の最大筋力(X方向)を2.5,5,10,30,50,70,90%を別々に3-5秒間発揮する,(2)等尺性最大筋力の50%(ターゲット;X方向)に発揮する力をできるだけ長持間保持する,という2課題を行った.その結果,力発揮レベルの増加にともなう力の分散量が増大,また,最大下強度における一定強度保持時において時間経過とともに力の分散量の増大が認められた.一方,筋電図振幅値においては,分散方向への力の変動との類似性が増加する傾向にあり,特に筋疲労時における筋電図振幅値の増加する要因としては,「力の意図しない方向への分散」という因子の存在が新たに確認できた.
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