Research Abstract |
平成23年度は,活動筋からの反射性制御のうち筋機械受容器反射が非活動肢の静脈血管応答に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした. 被験者は半仰臥位姿勢にて20分以上の安静を保った後,次のような2条件のプロトコールを実施した;1)35%MVC強度で2分間の静的肘屈曲運動のみを行う(EX=セントラルコマンド通常条件)と,2)上腕二頭筋腱部の振動刺激を行いながら1)と同様の運動を行う(EX+VIB:セントラルコマンド低下条件).上腕二頭筋腱部の振動刺激は筋紡錘の求心性神経を刺激し,反射的に筋収縮を生じさせる.つまり,随意的な上腕二頭筋収縮時に腱振動刺激を同時に行うと,随意的な運動時のみと比較して,筋張力は同様である(筋機械受容器反射の程度が等しい)が,セントラルコマンドが低下した状態となる.超音波法を用い,非活動肢の尺側皮静脈血管横断面積を計測し,静脈血管応答の指標とした.もし,筋機械受容器反射による交感神経活動亢進が静脈血管収縮に関わっているのであれば,EXおよびEX+VIBとも運動開始初期から静脈血管横断面積が低下し,静脈血管横断面積の変化は条件間で等しくなると仮説できる. いずれの条件も,運動時の筋張力発揮は35%MVC強度で維持された.しかし,運動中の循環応答やRPEはEXよりもEX+VIBで低値を示した.つまり,セントラルコマンドの賦活程度のみが条件間で異なっていたと推察される.この時,EXで観察された静脈血管横断面積の低下が,EX+VIBでは見られなかった.本研究で得られた結果は仮説と逆の結果となったことから,運動に伴う静脈血管収縮に対し,筋機械受容器反射由来の交感神経活動亢進は有意な影響を及ぼさないことが示唆された.本研究は運動に伴う静脈血管収縮の機序解明を目指したものであり,本研究で得られた結果は,未解決な点が多い運動時の静脈血管応答を理解するうえで有意義な情報になると考えられる.
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