2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700607
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石岡 丈昇 北海道大学, 大学院・教育学研究院, 助教 (10515472)
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Keywords | ライフストーリー / 周縁アスリート / 貧困世界 |
Research Abstract |
研究プロジェクト初年度である平成22年度は、フィリピンの現地調査にてライフストーリー・インタビューを実施し、トランスクリプトを作成した。同時に、本研究の理論的方法的視角の検討をおこなった。 具体的には、スポーツシステム内に占める周縁アスリートの位置を文献資料から跡付け、そうした位置に宛がわれる周縁アスリートが自らの境遇をどう知覚しているのかを、これまでのインタビューデータより再構成する論文を執筆した。こうして調査の論点を明確にしつつ、2011年3月にマニラ首都圏のボクシングジムで集中的に聞き取り調査を遂行した。 この調査では、多くのフィリピンのボクサーが、厳しい試合条件(通常の試合体重よりも重いクラスでの試合、自らよりも遥かに戦歴の良い対戦相手との試合など)であってもそれを受け入れてリングに上がる論理がうかがえた。その論理は、報酬といった経済的合理性にのみ基づくものではなく、試合に出場することで自己が見出される点や貧困世界における男性的威信の問題など、彼ら自身が身に付けている性向の内実を指し示すものであった。 次年度は、引き続き、フィールドでの聞き取り調査を実施し、ボクサーの性向により深く分け入り、そこから調査対象ボクサーのスポーツシステム内に占める客観的位置と彼らの主観的表象の結合について解読を進める予定である。 なお、本年度の成果として以下がある。「チャンピオンスポーツの光と影-常態としての「敗者の生産」」『体育の科学』2010年5月号。
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