Research Abstract |
近年の学校教育現場では,教員の休職者数が増加している。文科省は,病気休職者が一年間で7,655名であり,内4,675名(61.1%)が精神性疾患であるとしている。原因のひとつとして,ストレスに伴う神経症やうつ病などの精神的疾患を理由とされ,5年前の10倍以上である。教員の危機的状況下では,医学的対処による精神疾患の治療と同時にメンタルヘルスの悪化を防ぐ予防的対処が必要である。メンタルヘルス向上のための対処法として,運動や身体活動がある。本研究では,小・中学校の学校教員を対象に,運動・身体活動実施程度および学校ストレス経験がメンタルヘルスにどの程度影響を及ぼすかについて,個人的特性を考慮し検証することを目的とした。群馬県の小中学校教員255名を分析対象とし,個人的属性,メンタルヘルスパターン診断検査(MHP),教員のストレス経験尺度,そして身体活動評価表を郵送法により調査した。対象者の年齢は22歳から58歳までを占め,男性186名,女性69名であった。QOLは女性に比べ男性が高く,ストレスでは男性に比べ女性が高く,女性のメンタルヘルスの悪化が示された。共分散構造分析により,ストレス経験および運動・身体活動がメンタルヘルスに及ぼす影響を検討した結果,男女にて異なる因果が示された。男性ではストレス経験と運動・身体活動の双方がメンタルヘルスに影響を与えていた。一方,女性では運動・身体活動のみがメンタルヘルスに影響を与えていた。男女共に運動・身体活動は「生きがい度」に正の影響を,また「ストレス度」に負の影響を及ぼしており,運動・身体活動が高まれば「生きがい度」が高まり,「ストレス度」が低まることが明らかにされた。以上より,運動・身体活動の実施がメンタルヘルスにポジティブな影響を与える可能性が示唆された。今後は、どの程度の運動・身体活動がメンタルヘルスに寄与するかを同定する必要がある。
|