2010 Fiscal Year Annual Research Report
眼球運動計測を利用した運動観察に伴う空間的注意の変容過程の解明
Project/Area Number |
22700624
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
渋谷 賢 杏林大学, 医学部, 助教 (30406996)
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Keywords | 運動観察 / 眼球運動 / 到達把持運動 / 空間的注意 / 知覚・運動協応 |
Research Abstract |
本年度は実験系の開発と予備的実験を実施した.テーブルを挟んで実験者と被験者が対面する環境を設定し,その中間点にターゲットとなる把持物体(直径4.5cm,高さ12cmの円柱)を設置した.また,ターゲットの左右15cmの位置にLEDをそれぞれ設置した.実験は0.5kHzもしくは1kHzのいずれかの予告音によって開始された.0.5kHzの予告音が呈示された試行では,続く運動開始音を合図に実験者がターゲットに向けて左右いずれかの腕を伸ばし,それを把持した.運動開始500ms後に時々左右いずれかのLEDが点灯した.被験者は常にターゲット中央の固視点を注視し,点灯したLEDに素早く眼を向けることが要求された(サッケード課題).他方,1kHzの予告音が呈示された試行では,続く運動開始音を合図に被験者がターゲットに右腕(利き腕)を伸ばし,それを把持した(把持運動課題).被験者の右腕(利き腕)は,対面する実験者の右腕と解剖学的な対応があるのに対し,実験者の左腕とは鏡像関係で対応する.本実験は,被験者が実験者の到達把持運動を観察している際の空間的注意をサッケード潜時から検討した.実験者が腕の到達把持運動を全く行わない統制条件では,被験者の左右のサッケード潜時に差は認められなかった.また,解剖学的に一致する右腕で行う到達把持運動の観察中も左右差は無かった.これに対し,鏡像関係で一致する左腕で行う運動を観察中では,ターゲットの右側へのサッケード潜時の方が左側よりも約20ms程早い傾向が観察された.このような結果は,鏡像関係で一致する腕の到達把持運動の観察が実験者の運動表象を活性化し,このことが空間的注意に影響を及ぼした可能性を示唆する,今後,この可能性を行動学的および生理学的実験でさらに検証する予定である.
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