2012 Fiscal Year Annual Research Report
近代ドイツ・ブラウンシュヴァイクの「遊戯運動」に関する研究
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22700628
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
釜崎 太 明治大学, 法学部, 准教授 (00366808)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | サッカーの変容 / フースバル / 体操遊戯 / コンラート・コッホ / トゥルネン=スポーツ抗争 |
Research Abstract |
平成24年度は、コンラート・コッホを中心とする教養市民層によって生み出された「Fussball」の概念と政治の結びつきに関する研究を深めた(フースバルの誕生)。 コッホらブラウンシュヴァイクのギムナジウム教師たちは、国家主義的な傾向にあった当時のドイツ国内の情勢のもとで―特に排他的な国家主義をもっていた体操家たちの反発の中で―、イギリス発祥のスポーツを普及させるために、英語の専門用語の多くをドイツ語に翻訳していく。その典型的な事例がサッカーである。soccerはFussballに、captainはSpielkaiser(Spielwart)に、goalはMal(Tor)に、といった具合である。一方で、国民への普及を企図したそうした翻訳には、例えば体操遊戯において領土的な意味でもちらいれていた概念がゴールの概念に援用されるなど、国家主義的な色彩を強くおびたものであったが、他方では、サッカーの起源を古代ギリシアに求める歴史認識の強調とともに、スポーツがドイツ人に相応しいものとして受け入れらる土壌を形成し、後の新興市民階級によるスポーツクラブの爆発的普及(「社交性」概念の役割)を準備していったのである。 その「フースバルの誕生(概念の形成と伝統の発明)」に寄与した教養市民層の多くは、国民自由党員を中心に結成された青少年・国民遊戯振興中央委員会の活動のなかで、統一ルールの制定、遊戯教師(現在のスポーツ教師)の育成、遊戯場(現在のスポーツ施設)の設置に寄与していくのである。今後の課題は、「フースバルの誕生」に携わったブラウンシュヴァイクの教養市民層の人々が国民自由党員であったのか否か、その実証史料を探すとともに、当時の国民自由党の政策(国民性と市民性)のなかでスポーツがどのように位置づけられていたのか、そしてそれらと「社交性」の関係について探究していくことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究を進めるうえで適切な実証史料の発見に時間がかかっている。特に、国民自由党員とブラウンシュヴァイクの教養市民層の関係、国民自由党員と(スポーツをめぐる)ナショナリズムの関係、などについての資料についてである。
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Strategy for Future Research Activity |
ネイティブのドイツ人に協力してもらいながら、国民自由党とブラウンシュヴァイクの教養市民層の関係、国民自由党員と(スポーツをめぐる)ナショナリズムの関係、などについての資料を探す予定である。
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