2010 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の体育における女性研究者のアイデンティティ構築とキャリア形成に関する研究
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22700630
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
稲葉 佳奈子 成蹊大学, 文学部・現代社会学科, 専任講師 (70431666)
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Keywords | 女性体操教員 / 社会的位置づけ / 明治大正期 |
Research Abstract |
本研究の目的のひとつである「戦後学制改革期以降の体育における女性研究者」のキャリア形成分析にあたり、その予備的調査・検討として、研究対象をめぐる歴史的文脈を明らかにした。 まず、明治期の中等教育において女性体操教師がどのような位置づけにあったのかという点について、制度的側面、言説の側面、女子体育をめぐる学問的背景という側面から分析をおこなった。その結果、様々な要因から複合的に形成されたがゆえに文脈ごとに多様な位置づけをもつ女子体操教師像が明らかになった。それは、従来の「女子体操教員=社会的評価が低い」とは異なる新たな見解であり、したがって上の研究は、戦後の女性体育研究者のポリティクスを分析する際に有効な視点をもたらすものである。 次に、女性体操教師の位置づけおよびポリティクスと社会背景との関連を把握するため、大正期の婦人問題をめぐる論争や運動の文脈における女子体育の位置づけに着目し、文献資料をもとに分析をおこなった。その結果、婦人運動の一環としての講演会に女性体育家が登場するなど、一時期は交差したかに見える女子体育と婦人問題が関係を継続し得なかったことが明らかになった。 このことは、女子体育と婦人問題という問題領域の乖離は、戦後の国内におけるフェミニズム運動と女性体育研究者のポリティクスとの距離にも影響をおよぼしている可能性を示唆するものであり、体育界における女性のキャリア形成とアイデンティティの問題を考える際に重視すべき前提となる。
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