2011 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の体育における女性研究者のアイデンティティ構築とキャリア形成に関する研究
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22700630
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
稲葉 佳奈子 成蹊大学, 文学部, 専任講師 (70431666)
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Keywords | 女子体育 / 体育・スポーツ界 / 女性運動 |
Research Abstract |
本研究は、戦後学制改革以降の体育領域における女性研究者が、よって立つ社会的カテゴリーの境界をどこにおき、カテゴリー内部のみずからのあり方をどのように認識したのかという点を明らかにしようとしている。そこで前年度の研究成果をふまえ、戦後の女性体育研究者による言説を分析すべく文献調査をおこなった。 1969年の第6回国際女子体育会議では、女性の「職業人としてのめざましい社会的進出」をふまえた「女子と子どもの教育」と「体育・スポーツの占める位置」の重要性への認識がしめされ、女性研究者における体育学的識見の深化がうたわれた。一方、社会的には高度経済成長期を経た日本において「ウーマン・リブ」といわれる女性運動の興起がみられ、より一般的に、女性のライフコースと性役割をめぐる問題や葛藤が認識されるようになった時期でもある。そうした社会状況を背景としながら体育領域における女性たちが「集団的に」一貫して問いつづけたのは、みずからが置かれている立場や役割それ自体ではなく、現状の立場からいかなる「体育人」としての実践を充実しうるかということであった。 前年度に明らかにしたとおり、明治~戦前期における「女子体育」というテーマは社会的な「婦人問題」とは認識・実践ともにかい離していた。そして今年度の研究によって、戦後社会においても、体育という領域における女性のあり方を追究する姿勢は、女性の社会的位置づけをめぐる問題認識とは視角が共有されていなかったことがわかった。このことは、体育・スポーツとジェンダーに関する研究、なかでも現在の体育・スポーツ界およびそこにかかわる女性のあり方とフェミニズムが射程にふくむ社会的諸問題との関係を考察するにあたり、重視すべき点だといえる。
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