Research Abstract |
本研究の目的は,近年,運動・身体活動分野で注目を集めている行動変容法(Skinner,1953)を応用して,若年女性における活動的なライフスタイル形成を目指した階段利用促進の介入効果を検討することである。本研究では,若年女性の体力向上よりも,身体活動量の増強に焦点を当てた効果的な階段利用促進キャンペーンを実施する際の基礎資料を得ることを目指す。具体的には,近畿圏の総合女子大学を対象として,若年女性に対する階段利用促進バナーが日常生活の身体活動に及ぼす影響を検討する。2年目の研究目的は,大学構内の階段とエスカレーターが隣接している場所を対象に,階段利用の促進を目的としたポスターの掲示が「階段を昇る」という行動に及ぼす効果を検討した。方法は,近畿圏の女子大学構内にあるエスカレーター(昇り)と階段(33段)が隣接している連絡橋を測定場所として選択し,ベースライン期,介入期,フォローアップ期の3期を1週間ずつ測定した。先行刺激としてのポスターは対象者が階段とエスカレーターのどちらかを選択するポイントに至るまでに,ポスターを認識できる位置に設置した。分析の結果,階段利用促進ポスターを掲示した時期は,有意に階段を利用する者が増加した。ベースライン期と比較して,ポスター掲示期では3.3%の増加が認められた。このことから階段利用促進を目的としたポスターの掲示が先行刺激(先行事象)として身体活動の増強に有効である可能性が示唆された。階段使用者数の割合は,ポスター掲示期で有意に高まったものの,ポスター掲示期間終了後のフォローアップ期では維持されなかった。フォローアップ期にこの効果が維持されなかった理由として,階段を利用した結果としての後続刺激(後続事象)の不足が考えられる。本研究では,ポスターのみの介入であったが,今後,音楽やアートワークの利用といった,階段を使用する環境を操作することによる検討も行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,昨年度の介入研究の反省点を踏まえて,介入方法の見直しおよびデータ分析方法の改善を実施する。また,量的な分析だけでなく,質的な分析を実施し,多面的に若年女性のアクティブライフを構築するための階段利用促進介入の効果を検討していく予定である。
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