2011 Fiscal Year Annual Research Report
運動誘発性ストレスが脂肪細胞の脂質代謝制御機構におよぼす影響の解析
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22700652
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
橋本 健志 立命館大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (70511608)
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Keywords | 運動 / 脂質 / 糖尿病 / メタボリックシンドローム / 乳酸 |
Research Abstract |
具体的内容 前年度、脂肪分解の亢進に対する持久性運動トレーニングの効果として、脂肪分解に関与するタンパク質の発現量やミトコンドリア増殖を亢進させることを明らかにし、この分子メカニズムのひとつとして、運動中に産生される乳酸が関与している可能性を、培養脂肪細胞への乳酸添加実験から示した。 本年度は、乳酸の脂肪分解活性を高める効果をより顕著なものとするべく、運動誘発性のカルシウムシグナルを誘導するカフェインを乳酸に混合して脂肪細胞に添加し、脂肪分解活性を解析したところ、期待通り、より脂肪分解活性を高めた。また、脂肪分解過程で、脂肪細胞に蓄えられていた中性脂肪がより一層減少することを認めた。そこでこの混合物をラットに投与した際の脂肪減少効果を検討することとした。まず、混合物を投与した際の血中乳酸濃度を測定した。一般に、血中乳酸濃度は1mM前後であり、中程度の強度の運動を行うと4mMを超える。この混合物をラットに経口投与したところ、血中乳酸濃度は4~8mMにまで高まり、それは3時間持続した。次に、この混合物を健常なラットに1日おきに2週間経口投与し、投与しない日に、自発回転運動装置による自発的運動を併用した。混合物の投与によって餌の摂取量や体重、骨格筋量に変化はなく、自発的な運動量も、コントロール群(水を投与)との差異は認められなかった。しかしながら、内臓脂肪量が顕著に低下(約30%の低下)した。このことから、カフェインと乳酸という脂肪細胞を鍛える混合物が、脂肪分解活性ならびに脂肪燃焼効果を増大させ、脂肪量の減少を引き起こしたと推察される。 意義、重要性 脂肪分解を亢進する分子メカニズムを細胞レベルで明らかにし、その効果を生体において実証できたことは大変意義深い。今後、肥満や糖尿病等の代謝疾患の予防や改善に向け、極めて重要な知見を提供するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、細胞レベルで脂肪分解亢進に対する乳酸の効果を検証し、それを生体レベルで実証しようとするものである。現在まで、健常ラットに対する乳酸の脂肪蓄積抑制効果を認めており、当初の計画通りに実験を遂行できていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、健常なラットに対して認められた乳酸とカフェインの混合物の脂肪量減少に対する効果を、肥満を呈したラットに対して検討していく予定である。また、製品化、実用化に向けて、1日における混合物の摂取頻度(現在は1日1回)や、摂取量の関係性、安全評価などの詳細を検討していく予定である。
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Research Products
(11 results)