2010 Fiscal Year Annual Research Report
運動特異的な脂肪組織リモデリングのメカニズム:細胞外マトリックスの役割
Project/Area Number |
22700655
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
櫻井 拓也 杏林大学, 医学部, 助教 (20353477)
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Keywords | 脂肪組織 / 運動トレーニング / 細胞外マトリックス / リモデリング / 肥満 / 糖尿病 / Dermatopontin / DNAアレイ |
Research Abstract |
肥満は脂肪細胞の肥大化やマクロファージの浸潤などによる脂肪組織の再構築(リモデリング)を引き起こし、これには脂肪細胞とそれを取り巻く細胞外マトリックス(extracellular matrix : ECM)との相互作用が重要な役割を果たしていると考えられている。一方、肥満の改善手段として有効な運動トレーニングも脂肪組織を減少させて脂肪組織のリモデリングをもたらす。しかし、脂肪細胞とECMの相互作用が運動トレーニングによってどのような修飾を受けるかはまったく不明である。そこで、マウスに高脂肪食摂取と運動トレーニングを実施し、脂肪組織において高脂肪食摂取ならびに運動トレーニングによって発現が変化するECM関連遺伝子を検索することにより、新しい運動効果を解明することを目的に検討を行った。先のDNAアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析により、ECM関連分子であるdermatopontin (Dpt)の遺伝子が脂肪組織で豊富に発現していることがわかった。本実験では、このDptの遺伝子発現が高脂肪食を摂取させた肥満マウスの副睾丸周囲の内臓脂肪で増加し、この発現増加を運動トレーニングが抑えることが明らかになった。さらに、脂肪細胞株の分化過程においてDpt遺伝子の発現増加が観察された。DptはTGF-βのシグナリングなどに関与することが報告されているが、脂肪組織における役割は不明である。今年度の研究成果を踏まえて、このDptの脂肪細胞での役割を明らかにすることにより肥満・運動トレーニングによる脂肪組織のリモデリングのメカニズムを今後解明していきたい。Dptの機能が明らかになれば、運動の肥満改善効果について新たな知見を示すことができるだけでなく、Dptが肥満・糖尿病の改善のための新たなターゲット分子になり得る可能性があると思われる。
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