Research Abstract |
健康スポーツ科学や予防医学の分野において,高所に対する不適応を防ぐことや,効果的な高所トレーニング法の開発には,低圧低酸素下での運動能力や生体反応についてのメカニズムに関する基礎的な研究が極めて重要であると考えられる。本研究では,高所での有酸素低下のメカニズムを,特に呼吸筋の活動に注目して調べることである.平成22年度は,高強度運動時の呼吸筋群の仕事量を通常酸素下と低酸素下や低圧下で,最大下から最大運動まで自転車運動を行い,その時の胸腔内圧と換気流量から,呼吸筋の仕事量を測定し,運動時の呼吸筋での仕事量は環境によって変化するかどうかを検討した. その結果,低酸素下では通常酸素下よりも換気量が同一絶対強度下で有意に高値を示した.特に,中程度から高強度運動時においてみられた.一方で,最大運動時には換気量に有意な差は見られなかった.呼吸筋の仕事量は換気量の増加の程度と関連して,低酸素下において通常酸素下よりも有意に高値を示し,特に中程度から高強度運動時においてみられた.一方で,最大運動時には換気量に有意な差は見られなかった.したがって,中程度以上の強度の運動時においては低酸素下では,通常酸素下よりも換気量が高くなり,呼吸筋の仕事量(呼吸筋への負荷)は増加することが示唆された.このことにより,低酸素環境下では,単純な血中の低酸素ストレスのみならず,呼吸筋への酸素需要増加によって活動筋への酸素供給がさらにひっ迫していることを予想でき,23年度は低酸素吸入運動時の組織への酸素状態と呼吸筋活動の関係について調べる.
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