2011 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄におけるポジティブ心理資源とソーシャル・キャピタルの健康長寿への影響研究
Project/Area Number |
22700694
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
白井 こころ 琉球大学, 法文学部, 准教授 (80530211)
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Keywords | ソーシャル・キャピタル / 健康長寿 / ポジティブ心理 / 生活習慣病 / 沖縄 / 高齢者 / 公衆衛生学 / 社会疫学 |
Research Abstract |
本研究は、島嶼地域沖縄において、健康の社会的決定要因の視点から、地域のソーシャル・キャピタルと個人のポジティブ心理資源が高齢者の健康に与える影響について、社会疫学的知見を得ることを目的としている。 今年度の主な成果として、沖縄の地域社会に関する書籍1冊(2012年3月)、ソーシャル・キャピタルと健康に関する書籍2冊(印刷中)の刊行を行った。また、学会報告6本と学術論文6本の発表を行い、現段階の調査内容と、基礎的研究として論文化できたものを報告した。また、学会・論文による学術報告等を行った初年度の研究結果は、調査実施地域において報告会等を開催し、地域の健康教室や特定検診受診率アップの取り組みにも利用された。今年度の調査結果等の成果は、地元の新聞や読売新聞医療ルネッサンス記事などでも取り上げられ、多様な手段を通して社会還元されたと考える。 第一段階として、前年度には沖縄県N村において調査を実施し、1,185名から回答を得た。今年度は沖縄県M市において、研究協力協定を締結し、民生委員組織の協力を得て、自記式アンケートを留置法により行った。対象は、要介護高齢者を除いた、市内在住の自立高齢者とし5,714名から回答を得た。次年度は、中部地域での調査実施と共に健康診査、介護保険等の健康データとの結合作業を進め、より精緻な健康との関係について検討する予定である。 本年度の研究結果として、沖縄県N村・M市でのアンケート調査結果から、地域組織の参加や、人との繋がり(地域ネットワーク)が豊かな高齢者は健康状態が良好である傾向がみられた。また、同じ地域ネットワークでも、似た者同士のネットワークだけではなく、多様なつながりを持つ高齢者において健康状態がよりよい傾向があることがみられた。いわゆる橋渡し型のソーシャル・キャピタルが豊かな人で、検診受診や健康状態が良好な結果がみられ、高齢者の多様なつながりが健康に与える効果が確認された。今後、地域レベルでのソーシャル・キャピタルと個人の認知の関係についても検討を行う必要性があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、N村・M市で予定したアンケート調査によるデータ収集がほぼ終了し、第1期調査地域からの研究報告や学会発表を実施した。また具体的な結果の地域還元についても、市町村担当者と共に検討し、検診受診者への健康教育等の機会に研究成果の報告を行った。 次段階は、健康アウトカムとして介護保険による認知症発症や要介護状態の発生、死亡等のハードアウトカムと、アンケート調査によって得られた生活習慣や心理状態の評価について、データ結合を行いその関連性を時系列に検討する予定である。現在、そのための準備として、調査協力戴いている市町村との間で、研究協定書の締結を行い、倫理審査の通過、データ結合のための具体的な段取りの打ち合わせと合意形成等を行っている。 また、研究成果として、学術報告として、年間6本の論文発表(査読付き5本)と3冊の書籍の出版を行うことができた。平成22年度にハーバード大学公衆衛生大学院において、カワチ教授らに指導・助言を戴いたことは、今年度のこれらの成果に繋がったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、健康に関する市町村ならびに広域介護連合にご提供いただく、ハードアウトカムデータとの結合を完了させる。さらに沖縄県全域を正しく評価するため、北部・中部・南部3地域で、それぞれの評価を予定しており、次年度は中部地域でのデータ収集完了により、地域別のデータ比較も行う予定である。また、AGESデータ等全国他地域で行っている他の研究とも比較検討を行い、沖縄地域の特徴と、普遍的な社会と健康の関係について、検討を進める予定である。 論文執筆については、現在、地域ソーシャル・キャピタルと検診受診の関係、楽天的性格傾向と血圧、BMIの関係、また個人の主観的幸福感と地域全体の幸福感が、健康寿命の喪失に与える影響の検討、SOCとソーシャル・サポートが、認知症発症リスクに与える影響について、検討を進めており、論文化の予定である。
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Research Products
(15 results)