2011 Fiscal Year Annual Research Report
歩行時の転倒を感知する各種感覚の閾値と優先度の解明―転倒予防の基礎的検討
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22700695
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
内山 応信 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 准教授 (30464556)
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Keywords | 加齢・老化 / 転倒予防 |
Research Abstract |
本研究は,ヒトが転倒を感知するメカニズムを解明するために下記の3課題を遂行し,高齢者の転倒予防のための基礎知見を得ることを目的とした.これらの課題を達成することで,個々人の体力レベルを考慮しつつ,ヒトの様々な感覚が転倒を感知するための感覚の閾値や,それらの優先度を明らかにすることが出来る. 課題1.転倒を感知する感覚入力の閾値の解明 課題2.転倒を感知する各種感覚の優先度の解明 課題3.閾値や優先度と各種体力レベルの関係の解明 上記1~3を遂行するために,前年度中に作成した3種類の実験システム(システム1:被験者の視覚にのみ転倒刺激を与え被験者の反応(転倒回避動作)を観察する;システム2:被験者の前庭覚にのみ転倒刺激を与え転倒回避動作を観察する;システム3:被験者の体性感覚にのみ転倒刺激を与え転倒回避動作を観察する)による測定を実施した.その結果,実験システム1を用いた測定(動作分析及び筋電図)において,転倒刺激に対する転倒回避動作が生じないケースが多く見られことから,動的な立位姿勢制御中における視覚の貢献度の有無及びその程度を確認するための追加実験を実施し研究結果をまとめた.健常な男子学生(15名)を対象に,安静立位姿勢及び不安定姿勢(支持基底面からの重心の逸脱)における開眼及び閉眼時の足圧中心動揺単位時間軌跡長等を記録,分析した結果,安静立位姿勢に比べ不安定姿勢の制御時に視覚の貢献度が有意に減少した.なお,この追加実験結果は,国際学会における口頭発表として公表し,国際誌へ論文を投稿中である.この追加実験結果を受け,本研究の実験システムを再構築し,現在,データ測定及び分析を継続中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画した実験システムによる測定の結果,仮説と異なる傾向のデータが得られたことを受け,新たな実験システム構築のための追加実験の実施,実験に用いる機器の再検討とシステム再構築を行った.また追加実験のデータを整理し国際誌への投稿論文を作成したことから,当初の研究計画に遅れが生じた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,上述の実験システムにおける問題点(視覚外乱刺激のみによる転倒回避動作誘発の困難性,前庭覚のみへの転倒刺激の困難性,大型視覚外乱刺激装置の重量が被験者に与える違和感,等)を踏まえ再構築した実験システムによる測定及びデータ分析を継続する.これら諸問題は,小型視覚外乱装置の利用,実験条件の整理,等により対処した.再構築した実験システムにおいて,安静立位を保持する被験者に対し擬似的な転倒刺激(視覚,体性感覚,視覚+体性感覚)を与え転倒回避動作を誘発するための3種類のポジティブな外乱,及び転倒中の被験者に対し転倒を感知させない感覚入力を与え転倒回避動作を抑制するための3種類のネガティブな外乱を用意した.測定は平成24年度前期を目処に,成果報告(関連国際誌への論文投稿)は年度末までに実施する.
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