2011 Fiscal Year Annual Research Report
食後代謝動態に影響を及ぼす栄養成分の分子基盤の解明と疾病予防に対する役割
Project/Area Number |
22700696
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
新井 英一 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (60325256)
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Keywords | 食後高血糖 / 低GI成分 / 代謝動態 / 基質燃焼 / パラチノース |
Research Abstract |
食後高血糖は生活習慣病の発症に大きく関与している。これまでにシュクロースの異性体であるパラチノースが食後高血糖を抑止できる栄養成分であることを同定したが、パラチノースの生体利用については不明な点が多い。昨年度、パラチノースの摂取がシュクロースの摂取に比し、呼気中へのCO_2排泄量が緩やかに増加してピークを迎えるとともに、排泄量AUC∞(経時反応における推定のAUC)においても、パラチノース群が有意に高値を示した。このことから、パラチノース群は、糖の吸収は緩慢であるが、糖の利用は、体内への蓄積に動員(脂肪貯蔵)されるのではなく、効率的に燃焼(酸化)反応が行われた可能性が示唆された。そこで今年度、その詳細な機序を解明するために、投与試験後の肝臓における代謝に寄与する遺伝子の発現およびタンパク発現について精査を試みた。その結果、食後2~3時間までに種々の遺伝子の発現に変化が見られ、中でもフルクトース代謝に寄与する遺伝子において、発現が顕著に変化することを見いだした。フルクトースは肝臓で主に代謝されるが、フルクトースの代謝速度が細胞内での栄養素の代謝動態を変化させることに寄与すると考えられた。また興味深いことに、飢餓や摂食に応答することが報告されている繊維芽細胞増殖因子(FGF21)遺伝子の発現変化が著しいことから、本因子が食後の代謝動態の中心的なレギュレータである可能性が示唆された。今後、FGF21に関係する因子および発現調節機構を解明することが可能になることで、疾病との関係性だけでなく、健康長寿を目指す食事療法の開発および貢献に寄与できると考えられる。
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Research Products
(5 results)