Research Abstract |
本研究では,日本人の温熱感覚に適合する,熱産生レベルに応じた温熱的快適性閾値の推定式を導出することを目的としている.日本人の温熱感覚は,ISOなどの国際的な作業環境基準値や許容値に適合しないことが報告されていることから,初年度においては,温熱的快適性閾値における人種差について,被験者実験より検討した.なお,申請者の研究成果により,白人若年成人男性(8名,22.4±4.2歳)と日本人若年成人女性(16名,22.1±0.3歳)における温熱的快適感閾値は,既往の知見として得られている.そこで,本研究では,対象を日本人若年成人男性(7名,22.5±1.2歳)として,同一の温熱環境条件(気温22℃,絶対湿度10mmHg,気流0.2m/s)とプロトコールにて実施することとした. 日本人男性は,全身の皮膚濡れ率が上昇すると,全身における温熱的不快感は,線形的に増加した.全身の皮膚濡れ率と温熱的快適感には,高い相関性が認められた(r=0.91,p<0.001).そこで,温熱的快適感閾値を求めた結果,日本人男性は,全身の皮膚濡れ率が0.39±0.05(-)に達すると温熱的不快感を覚え始めることが明らかとなった。申請者の既往の研究成果によると,白人男性の温熱的快適感閾値は,全身の皮膚濡れ率0.34±0.03(-)であり,日本人女性のそれは,全身の皮膚濡れ率0.21±0.03(-)であった.日本人男性と白人男性の温熱的快適感閾値は,若干異なる値であるものの,統計的な有意差は認められなかった.他方,日本人における男性と女性の温熱的快適感閾値には,有意差が認められた. これらより,皮膚濡れ率を指標とした場合,日本人と白人若年男性の温熱的快適感閾値は同等であり,人種差はないものの,日本人男性と女性の温熱的快適感閾値は異なり,性差のあることを示した.
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