Research Abstract |
研究初年度では,ヒトの温熱的快適感閾値における人種差および性差を検討した.その結果,白人と日本人を対象とした場合,温熱的快適感閾値には人種差はないものの,性差のあることが実験的に明らかとなった.男性における温熱的快適感閾値は,既報の熱産生レベルから得られる推定結果とほぼ一致することが確認された一方,女性におけるそれは,推定結果と著しく異なることが明らかとなった.そこで,研究二年度においては,女性の温熱感覚に適合する熱産生レベルに応じた温熱的快適性閾値の推定式の導出を試みた. 本研究では,日本人若年女性5名(21.8±2.5歳,卵胞期間中に参加)を対象とした.実験で設定する熱産生量は,2 Met,3 Met,4 Met,5 Metの4条件とした.トレッドミル上での運動により,設定熱産生量を実現することとした.そこで,有酸素的作業能力測定を事前に実施し,各被験者の運動負荷量となる歩行速度を決定した.被験者は実験用衣服(トップス,ショートスパッツ,靴下,運動靴)を着用し,気温30℃,絶対湿度10mmHg,気流0.2m/sに統制された風洞内にて,指定の歩行運動を行った. 皮膚濡れ率を指標とした場合,各熱産生量における温熱的快適感の閾値は,2 Met:022±0.11(-),3 Met=0.24±0.06(-),4 Met:0.26±0.16(-),5 Met:024±0.14(-)を示した.熱産生量の増加に伴い,温熱的快適感閾値はやや上昇し,両者の間には,相関係数r=0.82が得られた.そこで,これに基づいて,熱産生量(M,W/m^2)からの温熱的快適感閾値(comfort limit,(-))の推定式として,comfort limit=0.0002M+0.1969を導出した.
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