2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700728
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
古濱 裕樹 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部・生活学科, 講師 (60449874)
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Keywords | 染色 / 繊維 / 草木染 / 天然染料 / 環境 |
Research Abstract |
天然染料の染色では、堅牢度の向上や色調の多様化のために、金属イオンによる媒染が高頻度で行われる。金属イオンによる媒染を要しない染料は、藍、紅花、キハダ、貝紫等のごく限られた種類のものである。一般的に天然染料による染色は環境に良い(エコロジー)と考えられがちであるが、人体の健康や環境の生態系を害する恐れがあるクロムなどの重金属の使用、あるいは比較的安全な鉄や銅でも合成試薬を多量に用いていては、決してエコロジーであるとは言えない。本研究では、金属の使用を極限まで減らしながらも、これまでと同程度の品質の天然染料染色を行うことを目指した研究である。初年度の成果として、次の二つがあげられる。まず、金属イオン多用の弊害として、色彩に及ぼす影響を、銅と鉄、クロム(3価)の各イオンを羊毛や絹、綿に吸着させる実験から明らかにした。10ppm程度の低濃度の金属イオン水溶液であっても、繊維の色彩に変化をもたらすことを明らかにするとともに、条件によってはビウレット反応等の錯体形成反応によって、赤紫色などの金属イオンの色彩からは想像がつかない色が現れることを明らかにした。低彩度の色彩が中心の天然染料染色においては、金属塩付着に伴う金属イオンの可視光吸収によって天然色素由来ではない色が現れるケースがあることを明らかにした。初年度二つ目の成果として、赤色天然染料コチニールにおいて、媒染金属イオン(鉄、錫)の染色臨界濃度が極めて低いレベルであることを見出した。それは、錫イオンで0.0001mol/L、鉄イオンでもそれより数倍程度高い程度という極めて低い濃度であった。堅牢性(日光、洗濯)も遜色なく、むしろ高濃度金属イオンで処理したものは染色濃度(K/S値)が低くなるという結果を得た。今後の詳細な検討によって、色素濃度との相関性を含め、確定結果が得られるだろう。
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Research Products
(2 results)