2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700748
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
乾 賢 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (40324735)
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Keywords | 味覚 / 記憶 / 摂取行動 / 扁桃体 / 大脳基底核 |
Research Abstract |
食物記憶の想起時における扁桃体遠心性投射経路の活動をマンガン造影MRI法で明らかにすること目的とした。マンガン造影MRI法は、MRIの造影剤の一つであるマンガンがCa^<2+>チャネルを介して活性化した神経細胞に取り込まれ、軸索に沿って運ばれるという特徴を利用したものであり、活性化したニューロンの遠心性投射を可視化することができる。前年度までにおいて、味覚嫌悪学習の記憶を想起した場合は、想起しなかった場合に比べて、扁桃体基底外側核から扁桃体中心核と腹側淡蒼球へのマンガンの移動が多いことを示す結果が得られた。これらの結果は、食物記憶の想起時に扁桃体基底外側核から扁桃体中心核や腹側淡蒼球へ投射するニューロンが活性化することを示唆している。 今年度においてさらに実験を重ね、得られたデータをより詳細に解析したところ、腹側淡蒼球と考えていた領域が実際にはIPACといわれる脳部位と分界条床核であることがわかった。組織学的実験によって、扁桃体基底外側核からIPACや分界条床核へ密な投射が存在するが、腹側淡蒼球へは疎な投射しかないことがわかった。また、島皮質、嗅周囲皮質、梨状皮質といった大脳皮質領域への投射ニューロンも活性化することがわかった。IPAC、分界条床核、島皮質は味覚関連行動に関与することが報告されているが、嗅周囲皮質や梨状皮質については味覚への関与はこれまでに報告されていない。 本研究課題によって、食物記憶(味覚嫌悪学習の記憶)の想起時に、扁桃体基底外側核から大脳基底核(側坐核、IPAC、分界条床核)と大脳皮質(島皮質、嗅周囲皮質、梨状皮質)という2つの大きな方向性をもって情報が伝達されることが明らかにされた。これらの結果は、食物記憶の想起による行動の表出には多様な神経情報伝達経路が関与していることを示しており、それぞれの経路がどのような役割を担っているのかを調べていく必要がある。
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Research Products
(5 results)