2010 Fiscal Year Annual Research Report
食物アレルギー発症とFcRnの関連?ノックアウトマウスを用いた形態学的解析?
Project/Area Number |
22700770
|
Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
馬場 良子 産業医科大学, 医学部, 講師 (90271436)
|
Keywords | 食物アレルギー / FcRn / 空腸 / 吸収上皮細胞 / トランスサイトーシス |
Research Abstract |
FcRnはIgGの受容体であり、IgGを結合して、一方の細胞膜領域から他方の細胞膜領域へとトランスサイトーシスする責任分子である。これによって、IgGは細胞内消化を受けることなく輸送される。齧歯類では、乳仔の空腸にFcRnが発現し、摂取した母乳中のIgGを吸収上皮細胞を通過させて粘膜固有層側へと輸送する。このトランスサイトーシスを経て、IgGは母体から乳仔へと効率良く移行され、一定期間、乳仔の免疫機能を担う。一方、ヒトでは胎盤にFcRnが発現し、母体血(母親側)中のIgGを胎盤絨毛の毛細血管(胎児側)へ受け渡すことが知られており、また、成人の種々の臓器にFcRnが発現し、アルブミンを異化から保護すると共に、抗原特異的IgGや抗原-IgG免疫複合体の輸送にも関与していることが分かってきている。このように、FcRnは免疫機能との関わりが深く、遺伝子改変マウスを用いた解析等によって種々の自己免疫疾患との関連が報告され、さらに、それらの疾患の治療の標的分子として注目されている。 本研究計画においては、FcRnノックアウトマウスを用いて、この機序について詳細に検討し、食物アレルギーの初期的段階におけるアレルゲンの侵入を防ぐことで、食物アレルギー発症予防に役立てることを目的としている。これまで主としてラットを用いて実験を行ってきたため、新生仔期から離乳に至る過程のマウスの小腸に関する基礎的情報が少ないことから、研究初年度である今年度は正常マウスを用い、新生仔期から離乳期における空腸の構造とトランスサイトーシス機能について、詳細に検討を行った。その結果、新生仔期から乳飲期、離乳期における空腸吸収上皮細胞の形態並びにトランスサイトーシス機構はラットとほぼ同様で、母乳摂取と共にIgGの取込みおよびトランスサイトーシスが活性化され、離乳が近付くにつれ、それらの膜系の減少とトランスサイトーシス経路の消失が生じた。 以上の基礎的研究の成果を踏まえ、来年度の研究に活かしたい。
|
Research Products
(18 results)