2011 Fiscal Year Annual Research Report
安全な鶏肉供給を目指した薬剤を使用しない新規原虫感染制御法の開発
Project/Area Number |
22700773
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
松林 誠 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・細菌・寄生虫研究領域, 主任研究員 (00321076)
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Keywords | アイメリア原虫 / 鶏肉 / 原虫酵素 / シゾント / トランスクリプトーム / メロゾイト |
Research Abstract |
鶏に寄生するEimeria原虫は、下痢を主徴とする鶏コクシジウム症を引き起こす。感染鶏は重症例では血便を呈し死亡する等、本原虫による養鶏産業における被害は大きい。現行の抗コクシジウム剤は、宿主への強い副作用や鶏畜産物への薬剤残留問題を抱えており、新たな薬剤開発が強く求められている。中でもE.tenellaは最も病原性が高く、盲腸組織内での第2代無性生殖期には、シゾント内部のメロゾイトが爆発的に分化・増殖し、盲腸粘膜を破壊する。本年度は、この第2代無性生殖期の分化・増殖機構を明らかにすべく、基盤情報を得るため以下の解析を実施した。具体的には、盲腸粘膜固有層内の第2代ステージ虫体をレーザーマイクロダイセクション(LMD)にて単離し、mRNAを精製した。そして、RT-PCRにより原虫特異遺伝子の増幅に成功した。また、この第2代メロゾイトについて、昨年度実施したトランスクリプトーム解析データから部分塩基配列情報を得て、ステージ間で共通に発現していると推測されるいくつかのターゲット分子のクローニングに成功した。つまり、他種原虫で薬剤ターゲットとして報告されている2種の原虫酵素について、全長の解読に成功し、特徴的なモチーフを有することを確認した。現在、大腸菌による組換え体タンパク質を作製し、酵素活性を確認中である。また、顕微鏡下で第2代無性生殖期虫体を未成熟~成熟期の4段階に分け、それぞれをLMDにより分離、回収した。そして、NCBI等に登録されているE.tenellaの遺伝子情報からE.tenella特異マイクロアレイを構築し、発育段階におけるup-regulate遺伝子を同定した。その結果、細胞骨格、細胞分裂関連遺伝子の他に、いくつか原虫特異的と考えられる遺伝子が強発現していることが分かった。現在、リアルタイムPCRによるup-regulateの確認を行っている。これらの第2代シゾント関連遺伝子は、病態発現因子と考えられ、防除に向けた新規ターゲット分子となる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
レーザーマイクロダイセクションを導入したことで、最も病原性の高いステージ虫体を盲腸組織内から単離する方法を確立できた。これにより、これまで解析が行えなかったステージのトランスクリプトーム解析および発現解析が可能となったことが大きな要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、これまでの2年間の成果により同定できたターゲット分子について、より詳細な機能解析を行っていく。つまり、遺伝子組み換え体については、in vitroでの酵素活性測定等、characterizationを進めていく。E.tenella原虫については、他種原虫と比して遺伝子機能解析の方法が未確立であるが、in vitroでRNAi等を試み、表現型を観察し、機能解析を進める。
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Research Products
(5 results)