2011 Fiscal Year Annual Research Report
土地固有の自然社会史認識と地域づくりをつなげる環境教育プログラムの開発
Project/Area Number |
22700793
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小栗 有子 鹿児島大学, 生涯学習教育研究センター, 准教授 (10381138)
|
Keywords | 環境教育プログラム / 地域づくり / 地元学 / 風土 / 生活史 / 自然社会史認識 / 持続可能性 |
Research Abstract |
本研究は、1)吉本哲郎が提唱する地元学(水俣地元学)の思想と手法を軸にして、地域に深く学び、暮らしづくりに役立てていく実践の特性に理論的位置づけを与え、2)学習者が暮らすその「土地固有の自然条件」と「社会経済史」を統一的に認識し、地域の個性(土地固有の自然社会史)を把握する調査方法の開発を目的にしている。また、3)その過程で獲得する認識が、現実の地域づくりの中で活用される条件を明らかにしていくことを意図している。 本年度は、昨年度行った4つの調査研究アプローチ:(1)吉本地元学研究、(2)沖縄県国頭村の事例研究、(3)奄美・徳之島古老調査研究、(4)垂水市地区振興計画策定調査について次のように発展させた。(1)吉本が手掛けた沖縄県糸満市における集落再生と地元学実践を中心とした水俣地元学の新たな手法開発に関する調査と整理、(2)国頭村ツーリズム協会における人材養成プログラム分析と特徴の抽出、(3)奄美・徳之島古老にみる環境観の獲得と地域社会変容に関するピアング分析、(4)垂水市地区振興計画策定プロセスにみる課題整理。これらの作業を通じて、地域の個性を把握するための構成要素の共通性とその獲得方法の相違、そこから暮らしづくりにつなげていく際の課題がみえてきた。また、以上の成果に加え、プログラム開発に向けた協力者として奄美群島の自然と文化遺産の把握・保存・活用(奄美遺産)に取り組むコアーメンバー、および、垂水市の地区振興計画担当・地域防災担当を中心とする職員との実践研究に着手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで実施してきた事例研究を通じて、具体的な地域の自然と社会経済状況(地域の個性)について把握し、それを暮らしづくり・地域づくりに活かすための共通点や課題が見えてきており、次の展開となる調査手法の開発に向けた見通しをもつに至っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、大きく3つある。一つは、事例研究を通じて得た情報・調査結果について、本研究課題に照らしてより丁寧な分析と整理を行うことである。特に、地域の個性を把握するための調査項目とそれらの関連性について、事例地の置かれた文脈を踏まえて整理し直すことである。二つ目は、プログラム開発地域を絞り込んで、その地域の実情に添った調査方法を精査していく。方向性としては、奄美遺産の活動に重点的に関わり、活動の関係者の協力も得ながら、現場において利用可能な調査方法を編み出していく。最後は、今回実施する一連の調査プロセスとその成果を実践レベルにおいて展開、研究を持続させていくためのネットワークづくりにも取り組んでいく。
|