2011 Fiscal Year Annual Research Report
植民地朝鮮における緑化の技術と思想が本国日本に与えた影響
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22700839
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹本 太郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (10537434)
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Keywords | 記念植樹 / 砂防事業 / 環境史 / 帝国林業 |
Research Abstract |
現在の緑化運動にも結びつく、植民地朝鮮における緑化の技術と思想が本国日本に与えた影響を明らかにすることは、第一に、戦後に断絶され、忘却された戦前・戦中の緑化の実態を把握することになる。第二に、近年、環境史の分野で注目されている、帝国の「環境保護主義」の日本とその植民地における展開が明らかになる。第三に、植民地における経験のフィードバックが国内森林政策史に新たに記述される。第四に、これまで国内森林史研究で欠落していた、近代の技術および思想に関する分野が開拓されることになる。 植民地朝鮮における緑化の技術と思想の発達が本国日本に与えた影響について、23年度は、一貫して継続した国内における文献および先行研究の整理の他には、具体的に以下の方法により明らかにした。 緑化の思想について、朝鮮総督府山林課長の齋藤音作の足跡の追跡を継続した。具体的には朝鮮半島に赴任する前に勤務していた台湾における活動を明らかにすべく、台湾大学図書館および旧台湾総督府図書館において文献の収集を行った。これは音作の緑化思想の醸成を考える上で重要な調査となった。また齋藤音作の子孫とも継続的に聞き取りを行った。このほか、朝鮮総督府林業試験所技手の浅川巧に関して山梨県北杜市における調査を実施し、また収集した貴重な文献についてリスト化およびpdf化を進めた。 これまでの研究の結果を踏まえて、海外では台湾台北において開催されたThe First Conference of East Asian Environmental History(EAEH2011)において、国内では林業経済学会および環境史研究会「環境史シンポジウム災害・周縁・環境」において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植民地朝鮮と本国日本の緑化の思想と砂防の技術について齋藤音作と平田徳太郎の足跡から明らかにすることを目的としているが、22~23年度はおもに齋藤音作についての調査を進めた。当初考えていたよりも齋藤音作の思想と行動の重要性が判明し、深く掘り下げている点においては計画以上に進展しているが、平田徳太郎についてはまだ調査が進んでいないため、全体としては、(2)の「おおむね順調に進展している」との評価にした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度になるため、まずは齋藤音作に関する研究の成果の発表を中心に進めていく。同時に、平田徳太郎の砂防技術に関する調査を進める。韓国や台湾における補足調査があれば適宜対応していく予定である。
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Research Products
(3 results)