2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700846
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構・奈良文化財研究所 |
Principal Investigator |
赤田 昌倫 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 特別研究員(アソシエイトフェロー) (90573501)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 絹 / 文化財 / 中赤外分光分析 |
Research Abstract |
出土絹繊維に対して適切な保存方法を考えるために、出土絹繊維と、強制劣化試験を行った絹繊維における劣化状態と強度の関係について検証をおこなった。出土絹繊維の劣化状態の検証には赤外分光分析(FT-IR)を使用した。出土絹繊維のIRスペクトルを見ると、Amide基が最も変化が大きいという特徴が見られた。さらに偏光スペクトルからAmide基のピーク強度変化は繊維軸横断方向(⊥)に依存し、結晶化度の変化は繊維軸方向(∥)に強く依存していることがわかった。 出土絹繊維の中で劣化が顕著に進行しているものは、出土後に乾燥すると繊維形が崩壊し粉末化する傾向があることがわかった。この試料について分析をおこなった結果、結晶化度は現代の比較試料よりも高い数値を出すものが多いこと。AmideIIのピークパターンの変化が特に大きく変化しているもの多いことがわかった。 また、織構造を維持している出土絹繊維について、再度FT-IRによる3300cm-1(Amide A)のイメージング分析を行った。その結果、織構造の中でも特定の箇所においてピーク強度が低い箇所とピーク強度が高い箇所はそれぞれが集中して島状に存在していることがわかった。ピーク強度が低い箇所は、1730cm-1と1160cm-1にも特徴的なピークが見られ、劣化による二次生成物が見られた。さらにAmideIIのピーク強度についてもAmideIとの相対強度が低く現れることがわかった。 以上のことから、埋蔵環境中で劣化した絹の状態変化についてはAmideIIのピーク強度が関連し、AmideIとの相対強度が低い繊維については、脆く、裂けや断裂が多く見られる傾向があることがわかった。本研究の結果から、1000年以上の劣化を経た出土絹繊維に対して、FT-IRのイメージング分析から劣化状態を推定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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