2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700848
|
Research Institution | The National Museum of Western Art, Tokyo |
Principal Investigator |
高嶋 美穂 独立行政法人国立美術館国立西洋美術館, 学芸課, 研究補佐員 (80443159)
|
Keywords | 芸術諸学 / 蛋白質 / 分析科学 |
Research Abstract |
本研究では、絵画作品に用いられたメディウムを同定するための一手段として、クロスセクション上における染色にて、メディウムが蛋白質か/蛋白質でないかを判別できるかどうか検討してきた。当初予定していたGC/MSでの分析は機器の故障のために中止とし、絵画作品から採取したサンプルのメディウム分析はFT-IRで行った。また、薄片クロスセクションでの検討はアイソメットの故障のために実施できなかった。 絵具層が有色の場合は染色法の結果の判別が困難となるので、白色の地塗り(メディウムは膠もしくは乾性油)のみを対象とした。自作の地塗りと経年した絵画作品から採取した地塗りについて染色法を試みた結果、アミドブラックAB3(中性アミドブラック)および酸性フクシン溶液は、新しい試料でも経年した試料(16、19世紀の絵画から採取)でも膠をメディウムとする地塗り層を染めることから、膠を同定するための染色液として適切であることがわかった。ファーストグリーン溶液は新しい試料では有効だが、経年した試料については試料量に限りがあったため検討できていない。一方、スーダンブラックとオイルレッドOは新しい試料の場合はよく染め、乾性油を同定する染色液として適切だが、経年した乾性油(18、19世紀の絵画から採取)は染めにくく、同定用の染色液としては不適切である。特にスーダンブラックは新しい/経年した膠の試料とも表面を荒らして付着する傾向があり、メディウムの判定を誤る可能性がある。さらに経年した乾性油の試料の表面も荒らすこともあるので、染色法には用いないほうがよい。現時点では経年した乾性油を染色するのに適切な染色液がないことから、蛋白質用と乾性油用の両方でダブルチェックができない。よって染色法だけでメディウムを同定するのではなく、染色法はGC/MSやFT-IRの補助的な方法として考えるのが適切であろう。また、地塗りのメディウムが膠で上層が乾性油を含む層であった場合、地塗り層への乾性油の染み込みにより同定を誤る危険性を検討したが、染み込みは数μm~十数μmにすぎず、地塗り層のメディウムの判定を誤るほどではないと考えられた。
|
Research Products
(2 results)