2010 Fiscal Year Annual Research Report
土質遺構保存のための基礎的研究 -動水勾配を利用した塩類析出抑制法の開発-
Project/Area Number |
22700850
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
脇谷 草一郎 独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (80416411)
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Keywords | 土質遺構 / 露出展示保存 / 動水勾配 / 塩類析出 / 不飽和水分移動特性 / ゼロフラックス面 / リーチング |
Research Abstract |
展示施設内において露出展示保存された土質遺構では、遺構面において塩類が濃集、析出することによる崩壊や、過度の乾燥によって土が塑性を失い、崩落に至る事例がしばしば認められる。このような劣化が生じる主たる要因として、継続的な遺構面からの水分蒸発が拳げられる。そこで、本研究では遺構面から水分を適時供給することで鉛直方向の動水勾配をコントロールして、土が塑性を示す含水状態を維持するとともに塩類の除去をおこない、土質遺構の安定した露出展示保存法の開発を目指すものである。 昨年度は土壌カラムをもちいたカラム実験をおこない、土質遺構における鉛直一次元の熱・水分・溶質移動について検討をおこなった.実験では藤森シルトをもちいて30cm長の土壌カラムを作製し、マリオットタンクをもちいてカラム下端に地下水面を保った。カラム上端には小型ファンを設置して、一定の風量を与え蒸発を促進しつつ、同時に水を一定速度で、一定時間定時に毎日滴下した。このときカラム上端は湛水状態とならない給水速度とした。テンシオメータと熱電対付き電気伝導度センサを深度別にカラムに挿入し、それぞれ各深度の圧力水頭と温度、および電気伝導度の測定をおこなった。実験の結果、各深度のマトリックポテンシャルは日周期で一定の変動を示すが、電気伝導度はカラム表層においてわずかずつ減少し、深さ10cm程度の箇所では反対にわずかずつ電気伝導度が増加する様子が認められた。したがって、カラム上端からの給水によって土壌含水率を一定の範囲に保ちつつ、溶質は下方へと除去されたことが示唆された。 今後は熱・水分・溶質同時移動の数値解析をあわせておこない、カラム実験から得られた結果と比較をおこなうことで、数値解析の妥当性について検討をおこなう。得られた熱・水分・溶質同時移動解析のモデルは、土質遺構の露出展示保存の可否を検討する際に、その一助となるものと考える。
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