2010 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおけるインド・パシフィックビーズの材質と流通に関する科学的研究
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22700851
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
田村 朋美 独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (10570129)
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Keywords | インド・パシフィックビーズ / 非破壊元素測定 / 北部九州 / カリガラス / ソーダ石灰ガラス / 弥生時代 |
Research Abstract |
本研究では日本で出土するインド・パシフィックビーズについて非破壊元素測定をおこない、材質と着色材の関係からその歴史的変遷について明らかにすることを目的とする。平成22年度は北部九州における弥生時代後期後半のガラス小玉を中心に製作技法および化学組成の調査を実施した。調査対象とした資料は福岡県、佐賀県、大分県の5市町所在の8遺跡16遺構から出土したガラス小玉508点であった。 顕微鏡観察による製作技法調査の結果、当該時期の北部九州で流通したガラス小玉のほとんどがインド・パシフィックビーズと呼ばれる引き伸ばし法によって製作されたガラス小玉であった。AR法および蛍光X線分析による材質調査の結果、弥生時代後期後半に北部九州で流通したインド・パシフィックビーズの材質的特徴について新たな知見が得られた。従来の研究では弥生時代はカリガラス小玉が全盛を極めると言われてきたが、本研究において弥生時代後期後半の北部九州ではカリガラス小玉に匹敵もしくは上回る量のソーダ石灰ガラス小玉が流通していたことが明らかとなった。他地域における詳細な検討が必要であるが、このことは当該時期における北部九州の独自性を示す極めて重要な知見である。さらにこれら弥生時代後期後半に流通したソーダ石灰ガラスは古墳時代に大量に流通するソーダ石灰ガラスと化学組成がやや異なっており、ソーダ石灰ガラスの化学組成が時期的に変化する可能性が示されたことも重要である。今後は他地域の資料に関しても材質の変化を時期ごとに辿ることで現象的な整理をすすめていきたい。
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Research Products
(4 results)