2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおけるインド・パシフィックビーズの材質と流通に関する科学的研究
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22700851
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
田村 朋美 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (10570129)
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Keywords | インド・パシフィックビーズ / 非破壊元素測定 / 中国・近畿・東海 / 古墳時代中期 / 金層ガラス / ローマガラス |
Research Abstract |
本研究では日本で出土するインド・パシフィックビーズについて非破壊元素測定をおこない、材質と着色材の関係からその歴史的変遷について明らかにすることを目的とする。平成23年度は中国・近畿・東海地方の資料を中心に製作技法および化学組成の分析調査を実施した。調査対象とした資料は、広島県、大阪府、京都府、奈良県、滋賀県、静岡県、神奈川県の9市町村所在の25遺跡から出土したガラス小玉約600点であった。 顕微鏡観察による製作技法調査の結果、弥生時代後期に大量に流通するものの古墳時代前期に一旦流入が途絶えていた紺色透明を呈するインド・パシフィックビーズが近畿地方を中心に古墳時代中期前半に再び流通している状況を確認できた。さらに、京都府長岡京市宇津久志1号墳(古墳時代中期)からこれら多数のインド・パシフィックビーズとともにローマ系の金層ガラス玉を検出した。当時の交易関係を解明する手掛かりとなる重要な成果である。 さらに、古墳時代後期には多彩なインド・パシフィックビーズが大量に流通するが、これらの流通が途絶えると同時に多彩な植物灰ガラス製小玉が出現することが明らかとなった。植物灰ガラスは融剤のソーダ源に植物の灰を用いたと考えられているガラスである。これらの植物灰ガラス製小玉は製作技法の点において、インド-パシフィックビーズとは異なる特徴を有する。材質的にもササンガラスなどとの関係が示唆されるガラスであり、流通経路の変化を示唆する可能性が考えられる。また、これらの植物灰ガラスにはインド・パシフィックビーズと同じ着色技法がもちいられていることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、本年度までに九州・中国・近畿・東海地方の資料の調査を進めることができた。また、これまで分析事例の少なかった弥生時代後期および古墳時代中期の資料についても複数の遺跡から出土した資料を数多く分析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は関東・東北地域のガラス小玉の様相を把握するとともに、当該地域におけるインド・パシフィックビーズの流通状況を確認する。さらに、平成24年度は最終年度であるため、これまでの研究成果を統合して日本列島全体におけるインド・パシフィックビーズを基礎ガラスの材質および着色材の種類から分類し、その分類をもとに、各種のインド・パシフィックビーズの歴史的な変遷過程を明らかにするとともに日本への流入時期のモデルを提示する。 つぎに、上記の作業で明らかとなった日本におけるインド・パシフィックビーズの歴史的な変遷過程について、韓国や中国など東アジアをはじめ東南アジアなどの周辺諸国の事例とも比較検討することで、インド・パシフィックビーズの交易ルートを明らかにし、さらには生産地に関する検討もおこなう。
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Research Products
(5 results)