2011 Fiscal Year Annual Research Report
前線帯の振る舞いからみた日本の気候変動に関する研究
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22700856
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
高橋 信人 宮城大学, 食産業学部, 助教 (90422328)
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Keywords | 前線帯 / 日本 / 気候変動 / Thermal Front Parameter / NCEP/NCAR再解析値 / 長期傾向 / 年々変動 |
Research Abstract |
本研究は、前線帯(天気図上で前線が現れやすい帯状の領域)の振る舞いに注目して日本周辺域の気候変動の実態を明らかにすることを目指すものである。平成22年度はこれを実現するために、まずは客観解析データから前線帯データを作成するための客観的手法の開発・検討をおこない、1948年以降の前線帯データの整備をおこなった。そして、この前線帯データを用いることにより、日本の前線分布型の季節別出現率の長期傾向やエルニーニョ/ラニーニャ現象時における日本付近の天候の季節推移を調査し、例えば近年の夏期(7/20~8/13)における日本付近での前線頻度の増加傾向や、エルニーニョ(ラニーニャ現象)時の冷夏(暑夏)から暖冬(寒冬)への変化が前線帯の季節進行により説明できることなどを明らかにすることができた。 平成23年度は、前線帯の振る舞いが日本の天候へ及ぼす影響についての調査をおこなった。具体的には、前線頻度分布の年々変動が大きく、その天候への影響が大きな夏期(7/20~8/18)の天候に注目した調査と、梅雨期(6,7月)および秋雨期(9,10月)の前線活動に関する調査をおこなった。まず夏期に関する調査では、日本の150地点の気象官署を夏の晴天率(平均雲量8.5以下、降水1mm以下の日の出現率)をもとに10地域に分け、各地域の晴天率と前線頻度との年々値における関係から、各地の晴天率に関わる前線活動域を調査した。結果、本州の多くの地域の晴天率がその地域の200~400kmほど南の前線頻度と深く関わっていること、北海道や南日本地域ではそれらの関係が弱いことなどが明らかとなった。また、梅雨期と秋雨期に関する調査では、両者で同じような位置に前線が存在する事例を抽出し、その際の降水域の広がりがどのような気圧配置(前線上の低気圧の中心位置や台風の位置などをもとに分類したもの)で実現しているのかを調査し、前線帯と降水域の関係において、前線位置に加えて考慮すべき条件を明らかにした。本年度の成果により、前線帯の変動から日本の各地の天候や降水量の変動を翻訳する際に重要な情報を示すことができたと言える。
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