2010 Fiscal Year Annual Research Report
激甚災害をもたらす火山体の巨大崩壊がなす地形の定量解析
Project/Area Number |
22700858
|
Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
吉田 英嗣 関東学院大学, 経済学部, 講師 (90548116)
|
Keywords | 火山体 / 山体崩壊 / 地形 / 流れ山 / 岩屑なだれ / GIS / 磐梯火山 / 有珠火山 |
Research Abstract |
本研究は、火山体の巨大崩壊によって形成された地形を定量的に記載・解析することを通じて、地形学の立場から崩壊の実態に迫る知見を獲得することを目的とする。火山体の巨大崩壊は大規模な土砂移動をもたらし、人間社会に与えるインパクトは相当に大きいために看過出来ない現象であり、これに関わる研究に取り組む意義は大きい。今年度は日本の代表的事例についてまとめ、次のような成果を得た。まず、大規模山体崩壊がなす地形のうち、比較的多くの事例で残されている「流れ山」に着目し、その縦断分布特性と崩壊規模や岩屑なだれの流動性との関連性を検討した。その結果、流れ山のサイズには下流方向に減少する傾向があり、この減少傾向が指数関数で近似されること、回帰式の切片(給源における流れ山の平均的サイズ)が崩壊規模(体積)と高い相関関係にあること、回帰式の傾き(流れ山のサイズの減少率)が岩屑なだれの等価摩擦係数と相関関係にあることを明らかにした。つまり、流れ山の縦断分布の特徴は山体崩壊の規模や岩屑なだれの流動性を反映している可能性を示した(Yoshida et al.,in review)。また、日本の代表的事例で、崩壊の量的規模に関して異なる見解が提出されている磐梯火山の1888年における山体崩壊についてレヴューを行った。そして、他の複数事例が示す崩壊地形のサイズと崩壊規模との関係を考慮することで、磐梯火山の場合は0.5km^3規模の崩壊であったとみなすのが最適であることを指摘した(吉田、2010)。このことについては今後、流れ山の縦断分布特性を調査することによって傍証する予定である。さらに、有珠火山の善光寺岩屑なだれを題材に、流れ山の伸長方向と岩屑なだれの流動特性との関係を検討し、論文として公表した(Yoshida and Sugai,2010)。
|