2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞増殖と癌の発生・進展におけるPIK3C3の役割
Project/Area Number |
22700861
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
江口 賢史 秋田大学, 大学院・医学研究科, 助教 (70457117)
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Keywords | 細胞増殖 / 癌 / イノシトールリン脂質 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
イノシトールリン脂質(phosphoinositides: PIs)は、タンパク質の局在や活性の制御因子で、細胞増殖、アポトーシス、細胞運動などを制御する。これら細胞応答の異常は「がん」と深く関わる。ホスファチジルイノシトール3リン酸(PI3P)はオートファジー、栄養シグナル伝達、小胞輸送など、上記細胞応答を支える素過程に関与するPIs分子種であるが、がんの発生や悪性化におけるこの脂質の役割は不明である。申請者はPI3P生成酵素であるPIK3C3の遺伝子をCreリコンビナーゼの作用により欠損する遺伝子改変マウスを独自に樹立した。本研究ではこの独自のツールを用いて、細胞レベルでの実験によってPIK3C3が増殖・生存の制御において果す役割を理解し、マウス個体レベルの実験によって発癌と浸潤・転移におけるPIK3C3の寄与を明らかにする事が目的である。 前年度、PIK3C3欠損MEFの解析結果からPIK3C3欠損によって細胞増殖が顕著に抑制されることを明らかにした。この結果から、PTEN欠損由来の前立腺癌モデルであるPB-Cre4-PTEN^<fiox/flox>のマウスにPIK3C3^<flox/flox>をかけ合わせたマウスは癌が抑制され、生存曲線が改善されると予期された。しかしながら、予想に反して、このマウスはPTEN単独欠損マウスと比較して生存率に有意な差は認められなかった。このマウスの前立腺のサザンプロットやウェスタンブロットの結果から2重欠損をPB-Cre4で引き起こす際に、効率が悪く欠損しきれていない遺伝子およびタンパク質が散見された。PIK3C3はヘテロ欠損ではPI3P産生も低下せず、細胞増殖に対する影響もないことを見出している。この事からPTENはヘテロ欠損でも癌を引き起こすことが知られているが、PIK3C3はヘテロ欠損では表現型を呈しないことから癌に対して影響がなかったと考えられる。現在は、効率良く2重欠損を引き起こす事が確認できた免疫細胞での癌モデルを用いてPIK3C3の癌に対する影響を解析している。その結果、PTEN欠損由来の発癌を抑制することを見出しており、その機序について解析中である。
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Research Products
(1 results)