2011 Fiscal Year Annual Research Report
セパラーゼ・セキュリンによるゲノム安定性維持機構と発がんとの関連
Project/Area Number |
22700866
|
Research Institution | 公益財団法人がん研究会 |
Principal Investigator |
熊田 和貴 公益財団法人がん研究会, がん研究所・実験病理部, 研究員 (10370149)
|
Keywords | ゲノム不安定性 / 染色体分配 / 細胞周期制御 |
Research Abstract |
本研究では、ゲノムの不安定性と発がんとの関連を解明するために、染色体分配制御機構の中心因子であるセパラーゼとセキュリンの機能解析を行った。まず、セパラーゼの有するプロテアーゼ活性の影響を調べるために、プロテアーゼ活性欠損型のセパラーゼ変異を作製した。プロテアーゼ活性欠損型変異セパラーゼの生理学的な発現量を得るためにBAC mutagenesisを用い、さらに、変異セパラーゼ発現細胞において内在性のセパラーゼのみをRNAiによってノックダウンすることで、内在性の野生型セパラーゼを外来性の変異セパラーゼに完全に置換する系を確立した。この系を用いることで、これまでセパラーゼが活性化に際して自己切断することは知られていたが、この自己切断にはセパラーゼの分子間での切断と同一分子内での切断の2種類が存在することを明らかにした。この発見に触発され、改めてセパラーゼの既知の3カ所の自己切断の性質を調べ直したところ、これらの自己切断部位は従来考えられてきたような同一の性質を有するものではなく、細胞周期における切断の時期も異なっており、それぞれが異なった制御を受けていることが明らかになった。これらの自己切断の意義を調べるためにそれぞれの自己切断部位の変異を作製し、内在性のセパラーゼと置換してその機能を解析したところ、これらの自己切断がセパラーゼの活性化や染色体分配のタイミングを制御することを示唆するデータを得た。また、セパラーゼの制御因子であるセキュリンの結合がこれらの切断のパターンを変化させることも明らかになった。本研究で得られた知見は従来セパラーゼの活性制御に大きな寄与はないと見なされてきた自己切断の染色体分配制御における重要性を明らかするものであり、セキュリンによるセパラーゼの活性制御や発がん機構の理解に大きく貢献すると考える。
|