2010 Fiscal Year Annual Research Report
発がん性チロシンホスファターゼSHP-2による固形がん発症の分子機構
Project/Area Number |
22700877
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堤 良平 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (50435872)
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Keywords | がん / ホスファターゼ |
Research Abstract |
チロシンボスファターゼSHP2は、機能獲得型変異が小児白血病や固形がんの発症に関与し、チロシンボスファターゼであるにも関わらずがんタンパク質であることが明らかになりつつある。しかし、これまで発がんの鍵を握るSHP-2の基質は不明のままであった。本研究ではSHP2を介した情報伝達の解明ならびに、発がんにおけるSHP-2機能獲得型変異の意義の解明を目指している。 本年度は、基質捕獲型・機能獲得型SHP-2と質量分析装置を組み合わせたSHP2基質の網羅的解析により得られたSHP-2基質候補分子群のうち、核内での遺伝子転写機構に重要な役割を果たすPAF複合体に焦点を当て、SHP-2がPAF複合体機能に与える影響を検討した。その結果、SHP2はPAF複合体構成分子のうちParafibromin/Cdc73を脱リン酸化することを明らかにした。さらに、SHP2による脱リン酸化はParafibromin/Cdc73によるWnt/β-catenin経路の活性化を促し、細胞増殖シグナルを惹起することを示した。また、Parafibromin/Cdc73はこれまでがん抑制たんぱく質として知られていたが、SHP2依存的な脱リン酸化によってParafibromin/Cdc73の機能ががん抑制たんぱく質様機能からがんタンパク質様機能に移行することを示した。 これらの知見はこれまでの研究では全く知られていなかったSHP2による核内転写制御機構を明らかにしたものであり、SHP2機能獲得型変異が引き起こす発がんの予防や治療に対し新たな視点を提供するものである。現在、上記の成果を学術論文として投稿中である。
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