2010 Fiscal Year Annual Research Report
ミエロイド系抑制性細胞によるT細胞機能不全の発生機序の解明
Project/Area Number |
22700897
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
粟井 博丈 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (10433020)
|
Keywords | がん / T細胞 / 免疫抑制 |
Research Abstract |
腫瘍を有する個体においては、腫瘍に対する免疫応答を惹起するCD8^+および、CD4^+T細胞の機能の減弱が観察され、このことが腫瘍を排除できない原因の一つであると考えられる。申請者は昨年度まで、担癌固体において誘導され、CD8^+T細胞の活性化を抑制すると報告されているミエロイド系抑制性細胞(Myeloid-derived suppressor cells ; MDSC)と呼ばれる細胞群に着目し、MDSCのCD4^+T細胞に対する影響について検討を行ってきた。そして、担癌固体においてMDSCを除去した場合には、除去しない場合に比べてIFN-γ産生CD4^+T細胞の割合が増加することを見出した。その結果はin vitroにおいても再現され、MDSC非存在下で抗原刺激を受けて増殖したCD4^+エフェクターT細胞に比べて、MDSC存在下で活性化されたT細胞では、その後の再刺激に伴うTh1サイトカインの産生能および、これを司るマスター遺伝子T-betの発現が減少していた。これらの結果よりmSCは抗腫瘍効果を発揮するTh1細胞への機能的分化を抑制することが示唆された。実際に、モデル抗原であるOVA発現腫瘍を有する個体へ、OVAを特異的に認識し活性化されるCD4^+エフェクターT細胞を移入すると腫瘍の増生が抑制されるが、MDSC存在下で誘導されたCD4^+エフェクターT細胞を移入した場合にはこの抑制効果が観察されなかった。さらに、MDSC存在下で活性化されたT細胞では、持続的な抗腫瘍効果を発揮するために重要な記憶T細胞の形成能が減弱していた。このことから、MDSCに感作されたエフェクターCD4^+T細胞は、抗腫瘍免疫を惹起できない機能不全T細胞に分化することが示唆された。現在、担癌固体において誘導されるCD4^+T細胞機能不全の原因を解明するため、MDSC存在下で誘導される機能不全CD4^+T細胞と正常活性化T細胞の遺伝子発現の差異について検討して、機能不全が誘導される分子メカニズムのさらなる解析を行っている。
|
Research Products
(2 results)